研究発表・論文要旨
  GNACは特定の見解を代表せずに研究者の異なる成果を紹介することにより、対立点、方法論の相違、モデルの妥当性等多くの科学的議論を本サイトで便利に概観できる場を目指しています。 このため、寄稿内容は客観的に当該研究者の成果を紹介するまでとし、これらの寄稿内容が事実であるかのような判断を本サイトユーザーが行うべきでない点に注意を促します。 例えば、古代の気候変動の原因が太陽活動の変動であったと思われる、という推論の「正しさ」とは、当該分析枠組では整合的だということで、事実であるとはいえません。 近似GARCHジャンプモデルを用いればあたかもNASDAQやS&P500等の有価証券を基準価値とするオプション・プライシングにより確からしい利用が可能となるといえるのかは不明です。 さらに、アムステルダム国際空港の滑走路上の安全性についてモンテ・カルロ法を用いたシミュレーションモデルが現実の事故回避に役立つと結論するのでもありません。 全ての見解はこの意味で相対的である点に注意を要します。 従って、UN/IPCCで普遍妥当性があるかのように政策決定に反映されているように見える地球温暖化の人間活動原因説も、太陽活動原因説、またはその他の説明も公平に 取り扱うことが必要です。
寄稿して頂いた順に記載しています。
Dr. Bas van Geel (アムステルダム大学生物多様性生態系力学研究所(Institute for Biodiversity and Ecosystem Dynamics)教授)
専攻は、第四紀古生態学・古気候学、研究フォーカスは、晩氷期および完新世の湖沼堆積物、沼沢、湿原および考古学調査地。1947年オランダ出身。オランダはグロニンゲン大学の学者van der Plicht氏と協力のうえ古生態学、古気候学、環境考古学、アイソトープ物理の学際的研究を行い、太陽活動が古代の気候変動の主因であったことを明らかにしてきた学問的貢献で知られる。
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Dr. Jin-Chuan Duan (ドゥアン・ジンチュアン博士はシンガポール大学金融会計学部長および経営研究所所長)
寄稿論文"Approximating GARCH-Jump Models, Jump-Difusion Processes, and Option Pricing" 「近似GARCHジャンプモデル、ジャンプディフュージョンプロセス及びオプションプライシング」へジャンプ....
Dr. Carl Wunsch (マサチューセッツ工科大学セシル&アイダ・グリーン教授・所属 地球、大気及び惑星科学部)
寄稿論文"Wiggle Matching and the Milankovitch Hypotheses (2006), Class Notes, MIT" 「Wiggle Matchingとミランコビチの仮説について」....
ヴァンヘール博士による寄稿論文
High-resolution records of late-Holocene climate change and carbon accumulation in two north-west European ombrotrophic peat bogs, PALAEO 186(2002) 275-310
北西欧州の降水涵養性泥炭地2箇所における完新世後期気候変動の高精度記録及び炭素蓄積
本研究はオランダ政府の世界大気汚染・気候変動国家研究計画の予算により行われた。
目的 主目的 - 長期的気候変動(有効降水量の変化)と降水涵養性泥炭地の種組成変化との関係を分析すること。
その他の目的 - 泥炭を形成する植物の種組成の変化と降水涵養性泥炭地における炭素と窒素の蓄積との関係を分析すること。
手法 過去1千年間を対象として炭素年代測定(wiggle-match dating)を行い、気候変動と太陽活動との関係を分析する。 大気中アイソトープC14とBe10の濃度は太陽磁場変動の影響を受け、太陽活動が高いと発生量が減少し、 太陽活動が低いと増加することから完新世後期の気候変動について推論を行う。
推論の前提事実  太陽活動が低いと、宇宙線が太陽風に妨害されにくく、大気中にC14を発生しやすい。
試料と分析方法 デンマークのLille Vildmose (56°50'N, 10°15'E)とイギリスのWalton Moss (54°59'N, 02°46'E) 2地点で深さ1mのピート(泥炭)モノリス試料を採取、大型、小型化石分析、C14試料の加速器質量分析(AMS)、かさ密度・強熱減量・C/N分析、 泥炭腐食化の比色分析。炭素年代測定されたポイント試料間の年代推定は線形補間法による。
主な結果 2地点試料の分析から、小氷河期には炭素蓄積は最小となり、それ以前の中世温暖化期には炭素蓄積は高かったと推定できる。 小氷河期には春夏の気温が低下し植物の成長できる季節が短かったためであり、泥炭地植生の一次生産性に影響を及ぼしたとみられる。 C14発生量の変化と当該泥炭地2地点の気候変動の兆候との関連性から、太陽活動の変動が完新世期の気候変動の主因であったと推論できる。
Environmental reconstruction of a Roman Period settlement site in Uitgeest (The Netherlands), with special reference to coprophilous fungi , J. of Archaeological Science 30(2003) 873-883
糞生菌類に着目して行われたオランダのユィトヘーストにおけるローマ時代集落の環境復元
目的 北西オランダのUitgeest-Dorregeestに存在したローマ時代集落跡から採取した、 井戸壁に用いられた芝土からなる古代土壌横断層の試料をもとに古環境復元を行うこと。
手法 著者ファンヘール氏の長期的取り組みテーマである花粉分析を用いる。考古学発掘拠点から採取した家畜糞内の子嚢胞子から得る指針値に注目した。
過去の植生に人間が与えた影響は花粉記録から推論できる。人間の集落地近辺では家畜糞により土壌の富栄養化として人間活動に起因する環境の変化があったほか、 放牧や耕作などの活動も集落周辺の環境変化をもたらしたものと推論できる。
試料と分析方法 大型および小形化石分析用に芝土表面試料を用い、子嚢胞子と糞生菌類の存在分析を行った。大型化石としては果実、 種子、野菜類の残骸および動物学的物質について分析を行った。
主な結果 花粉記録からわかったことは、集落は樹木が無い土地であり、井戸壁を木でなく芝土で固めた点にも周辺に木がほとんどなかった。 環境考古学では糞生菌類の指針値はほとんど用いられないので、この分析を通して花粉学者の注意を喚起したい。
Climate change and the expansion of the Scythian culture after 850 BC: a hypothesis , J. of Archaeological Science 31 (2004) 1735 - 1742
850 BC以後の気候変動とスキタイ文化拡大に関する仮説
本研究はオランダ国立科学研究機構(NWO)の資金により実施された。本共同研究の参加者: Bas van Geel, N.A. Bokovenko, N.D. Burova, K.V. Chugunov, V.A. Dergachev, V.G. Dirksen, M. Kulkova, A. Nagler, H. Parzinger, J. van der Plicht, S.S. Vasiliev, G.I. Zaitseva van Geel: アムステルダム大学生物多様性・エコシステム動態研究所 | Bokovenko, Burova, Kulkova, Zaitseva, Dergachev, Vasiliev:ロシア科学アカデミー材料文化史研究所、サンクトペテルスブルグ | Chugunov: エルミタージュ美術館 | Dirksen: ロシア科学アカデミー火山地学・地球化学研究所、ペトロパヴロフスク=カムチャツカ | Nagler, Parzinger: ドイツ考古学研究所、ベルリン | van der Plicht:グロニンゲン大学アイソトープ研究センター
目的 紀元前9世紀に拡大したスキタイ文化の繁栄と拡大が太陽活動減少により突然湿度が上昇した気候変動によりステップ期へ移行したからである、というユーラシア前史に関する仮説を論じる。
手法 C14を用いる炭素年代測定法による、南部シベリアのTuvaとKhakassiaでとれた堆積物の分析、花粉記録の分析をロシア、オランダ、ドイツの学者チームが行った。サンクトペテルブルグ放射性炭素データベースを用いて古墳など考古学的発掘物の地理的分布と時代の比較を行った。
推論の前提事実 紀元前第1千年紀の初期の北西欧州の気候が急激に温暖で乾燥したSubboreal期から涼しく湿潤なSubatlantic期へと推移した。 この気候変動は湿地堆積物中の植物構成から知ることができ、近年にはその変動期がBC850年頃であること、太陽活動の減少と関わりが深かったことが明らかとなった。
仮説 気候変動と文化推移(青銅時代から鉄器時代への推移)および北西欧州の人口密度が気候変動後急速に増大したこととの因果関係
主な結果 C14データセットからは南部シベリアでは3000BP (1050BC)以後間もなくスキタイ文化の発展が加速し、考古学的記録と放射性炭素データベースを用いた結果はそれ以前未居住地であったTuvaが突如として人口密度の高い土地に変わった。 涼しく湿潤なまたは以前より乾燥度が低くなった気候変動は、ステップの拡大即ちより高度なバイオマス生産という土地の扶養力増大に役立った。太陽活動の変動が気候変動の最大の原因であったと推論する。
Evidence for medieval salt-making by burning Eel-grass (Zostera marina L.) in the Netherlands, , Netherlands J. of Geosciences - Geologie en Mijnbouw 84-1, 43-49, 2005
中世オランダにおけるアマモ(Zostera marina L.)燃焼による塩生産の痕跡
8,9世紀頃のオランダ北西海岸地帯では住人は高い塩濃度のピートを燃やして塩の生産を行い、食料保存に用いていたが、その後、ピート層の沈降による海水域の拡大によりアマモ(Zostera marina L.)が繁茂しはじめた。塩の生産は過去のピート燃焼からアマモ燃焼による方法へ切り替わっていった。 これらは考古学上の発掘物から実証された。
寄稿論文はKolhorn付近で発掘されたアマモ準化石の顕微鏡写真も掲載。
Results of the CERPOLEX/Mammuthus Expeditions on the Taimyr Peninsula, Arctic Siberia, Russian Federation (2006), Quaternary International 142-143(2006) 186-202
シベリア北極圏タイムイル半島におけるマンモス探査CERPOLEX/Mammuthusプロジェクトの結果報告
筆者 - Dick Mol(ディック・モル):CERPOLEX/Mammuthus and Natuurmuseum Rotterdam (CERPOLEX/Mammuthusプロジェクトメンバー、オランダ・ロッテルダム自然博物館勤務) | Alexei Tikhonov (アレクセイ・ティホノフ):Zoological Institute, Russian Academy of Sciences, Laboratory of Mammals, Saint Petersburg (ロシア・サンクトペテルスブルグ、ロシア科学アカデミー動物学研究所哺乳類研究室) | Johannes van der Plicht(ヨハネス・ファンデアプリフト), Regis Debruyne (レヒス・デブルイネ): Centre for Isotope Research, Radiocarbon Laboratory, University of Groningen (オランダ・グロニンゲン大学アイソトープ研究所放射性炭素研究室) | Ralf-Dietrich Kahlke (ラルフディートリヒ・カールケ): Forschungsinstitut und Naturmuseum Senckenberg, Forschungsstation fuer Quartaerpalaeontologie, Weimar (ドイツ・ワイマール、ゼンケンベルグ研究センター・自然博物館第四紀古生物学研究ステーション) | Bas van Geel (バス・ファンヘール), Guido van Reenen (グイド・ファンレーネン): Institute for Biodiversity and Ecosystem Dynamics, Faculty of Science, Universiteit van Amsterdam (アムステルダム大学理学部IBED | Jan Peter Pals (ヤン・ペーター・パルス): Amsterdam Archaeological Centre, University of Amsterdam (アムステルダム考古学センター) | Christian de Marliave (クリスチャン・デマルリアヴェ): CERPOLEX/Mammuthus, F-94160 Saint Mandé (フランス・サンマンデ、CERPOLEX/Mammuthusプロジェクトメンバー) | Jelle W.F. Reumer (イェレ・リューマ): Natuurmuseum Rotterdam (オランダ・ロッテルダム自然博物館)
シベリア北部北極圏にあるタイムイル半島(Taimyr peninsula)はマンモスの死骸がみつかる考古学上重要な地点である。すでに1999年以来幾度かのCERPOLEX/Mammuthus探検プロジェクトが実施されてきた。 更新世後期における同地帯の気候条件は古生物学的分析による推論でき、同期の終期にかけてこの地帯で動物相が崩壊した理由は温暖化、湿度上昇、積雪量増加、絶縁植物層の増大、土壌の氷結が長びいたこと、草食動物密度の低下などが原因とみられる。
論文では90年代から最近までタイムイル半島における各種マンモスの死骸について興味深い発見の内容を記述、写真も紹介している。
The Eurogeul - first report of the palaeontological, palynological and archaeological investigations of this part of the North Sea, Quaternary International 142-143(2006) 178-185
Eurogeul* 調査第1回報告: 北海のEurogeul地域における古生物学、花粉学および考古学調査
*: Eurogeulはロッテルダム沖北海の航路
筆者: - Dick Mol(ディック・モル):CERPOLEX/Mammuthus and Natuurmuseum Rotterdam (CERPOLIX/Mammuthusプロジェクトメンバー、オランダ・ロッテルダム自然博物館勤務) | Klaas Post(クラース・ポスト), Jelle W.F. Reumer (イェレ・リューマ): Natural History Museum Rotterdam (オランダ・ロッテルダム自然史博物館) | Johannes van der Plicht(ヨハネス・ファンデアプリフト), Regis Debruyne (レヒス・デブルイネ): Centre for Isotope Research, Radiocarbon Laboratory, University of Groningen (オランダ・グロニンゲン大学アイソトープ研究所放射性炭素研究室) | John de Vos (ジョン・デフォス): National Museum of Natural History Naturalis, Leiden (オランダ・ライデン国立自然史博物館 Naturalis | Bas van Geel (バス・ファンヘール), Guido van Reenen (グイド・ファンレーネン): Institute for Biodiversity and Ecosystem Dynamics, Faculty of Science, Universiteit van Amsterdam (アムステルダム大学理学部IBED | Jan Peter Pals (ヤン・ペーター・パルス): Amsterdam Archaeological Centre, University of Amsterdam (アムステルダム考古学センター) | Jan Glimmerveen (ヤン・グリメルフェーン): CERPOLEX/Mammuthus, Rotterdam
目的: ロッテルダム湾沖北海にある航路ユーロギュール(Eurogeul)の海底には浚渫や漁業活動の影響により様々な動物相が発見された。論文は13種の陸棲哺乳動物および6種の海洋性哺乳動物からなる動物相の分析報告である。 同調査は2000年に開始された。Eurogeul探査プロジェクトは北海探査プロジェクトの一部として行われた。現在イギリスとオランダの間に位置する北海南部湾曲部の更新世に発生した植物相と動物相の継続的痕跡を高精度分析により 調査することである。ユーロギュールの海底は古生物化石が豊富に良好な状態で見つかる。同海域からはすでに1970年代から豊富に化石が発掘され、そのうちの最大量がライデン国立自然史博物館に保存されている。
分析法: 放射性炭素を用いる年代測定法
結果: ベルーガとセイウチの化石に基づくと同海底部には44,100BPから28,000BPまで陸棲哺乳動物と海洋性哺乳動物の両種が生息していたと推論できる。 Eurogeulのマンモス・ステップ生態系の陸棲哺乳動物に関する第1回のいくつかのデータによれば、北海の南部湾曲部のその他の部分で発見されたデータが裏付けられる。 これは花粉学的分析からも証明された。しかし、海洋性哺乳動物については同じ結果は得られなかった。
Non-pollen palynomorphs, Bas van Geel, 2001
古環境の分析特に最終間氷期、ワイチセリアン期、完新世までの古代地球環境の標識には、花粉学が花粉ばかりに注目してきた一方これ以外の有機微小化石として、藻、水性扁形動物、菌類などを挙げることができる。 本論文は花粉試料の調製方法から、花粉以外の有機微小化石も分析に役立つ品質で得ることができることを示し、特に次の各種の標識が古環境分析に役立つことを示している。Zygnemataceae、Pediastrum、 Botryococcus、Cyanobacteria(特にGloeotrichia)、菌類としては子嚢胞子(ascospores), 分生子(conidia)、厚膜胞子(chlamydospores)をとりあげ、前者の化石にはAmphisphaerella amphisphaerioides、 Ustulina deusta、Chaetomium spec.、Neurospora spec.の例、菌類としてCercophora、 Podospora、 Sporormiellaを用いる。Glomus spec.厚膜胞子、Gaeumannomyces spec.、さらに卵 化石はワムシ(rotifer)に注目、スイレン科(Nymphaeaceae)の植物繊維残骸をとりあげる。
結論 - 古環境分析を行う際花粉学は花粉だけに注目してきたが、アムステルダム大学で過去30年以上蓄積されてきた最終間氷期、ワイチセリアン期、完新世までの古代地球環境の標識に花粉以外の有機微小化石も 含めて改めて分析したら、古環境の標識として役立つことがわかった。
Fossil ascomycetes in Quaternary deposits
第四紀堆積物中の子嚢菌化石
Nova Hedwigia 82 3-4, 313-329, Stuttgart, May 2006
著者 - Bas van Geel, IBED | André Aptroot, Centraalbureau voor Schimmelcultures, Utrecht (ユトレヒト黴培養研究センター)
湖底堆積物、泥炭地堆積物、考古学上の発掘地から得る試料の中に豊富な種類の子嚢菌のなかでも子嚢胞子の残骸が発見されてきた。菌類化石記録は古生代までさかのぼることができる。しかし花粉学研究においては従来 古代の花粉を識別する際現在生存する属ないし種を参照するだけで別個の対象として扱ってきた。しかし古代花粉化石を現在生存する属ないし種と同一のものと認識できるような取り組みを行えば、過去の生態系を再現するのに たいへん役立つであろう、という問題意識を前提として分析を行った論文。問題点は、このような取り組みを行った論文が従来ほとんどないことであり、最近の35年間にヘール博士は第四紀の堆積物中にある化石菌類の残骸 に初めて注目した。
菌類化石の残骸をGeel[2001: Non-pollen palynomorphs]の試料調製法を用いて準備したうえで、次の分類群を選択して分析を行った。Actinopeltis sp.、Amphisphaerella dispersella、 Anthostomella cf. fuegiana Speg.、Apiosordaria verruculosa、Arnium spp.、Bombardioidea sp.、Byssothecium circinans、Caryospora callicarpa、 Cercophora sp.、Chaetomium sp.、Clasterosporium caricinum、Coniochaeta ligniaria、Coniochaeta xylariispora、Didymosphaeria massarioides、 Diporotheca rhizophila、Gelasinospora cf. retispora、Gelasinospora sp.、Geoglossum sphagnophilum、Lasiosphaeria caudata、 Meliola ellisii、Neurospora crassa、cf. Persiciospora sp.、Pleospora sp.、Podospora sp.、Pteridiosperma sp.、Rhytidospora cf. tetraspora、 cf. Scopinella barbata、Sordaria sp.、Sporormiella sp.、Stomiopeltis sp.、Trichoglossum hirsutum、Ustulina deusta、Valsaria cf. variospora、 Valsaria sp.、Zopfiella lundqvistii。
結論 - 菌類化石の残骸のなかでも泥炭地の堆積物と考古学発掘地の試料から得るものを分析すると、古代生態系について知るのに役立つことがわかった。
High precision 14C dating of Holocene peat deposits: A comparison of Bayesian calibration and wiggle-matching approaches
Quaternary Geochronology 1 (2006), 222-235
完新世泥炭地堆積物の高精度炭素(14C)年代測定: ベイジアン較正と14C年代測定Ⅱ(Wiggle-matching法)の比較
筆者 - Dan Yeloff(ダン・イェロフ), Bas van Geel: EBED | Keith D. Bennett(キース・ベネット):Palaeobiology, Uppsala University(ウプサラ大学古生物学専攻) | Maarten Blaauw(マールテン・ブラーユ): Centro de Investigación en Matemáticas, Mexico(メキシコ国立数学研究所) | Dmitri Mauquoy(ドミトリ・マウクォイ): Department of Geography and Environment, University of Aberdeen, Scotland (スコットランド、アバディーン大学地理学環境学部) | Ülle Sillasoo(ユッレ・シッラソー): Department of Landscape Ecology, Institute of Ecology, Tallinn University, Estonia (エストニア、タッリン大学生態学研究所景観生態学部) | Johannes van der Plicht(ヨハネス・ヴァンデアプリヒト): Centre for Isotope Research, University of Groningen / Faculty of Archaeology, Leiden University, The Netherlands (オランダ、グロニンゲン大学アイソトープ研究所及びライデン大学考古学部)
方法論 - 年代測定に用いる材料は、同質の各層位単位の泥炭蓄積速度を精確に再現するために十分なC14年代が含まれるように選択する戦略をとった。 現在推奨されるINTCAL04の較正カーブを用いて、C14年代を暦年代(cal BP または cal BC/AD)に変換する二つの方法を開発、これらは(1)異なる個別の年代の較正または(2)未較正年代の数列にwiggle-matching を行うことである。当該較正カーブを用いる泥炭堆積物から得た個別のC14年代較正を行うと、暦年代推定はかなり不正確になりやすい。しかし、wiggle-matching手法は密接に並ぶ未較正測定値のシーケンスを較正カーブに フィットさせて放射性炭素と暦年代との非線形関係を求める、という方法であり、前者の問題点を回避できる。
ここでは2種類のベイジアン年代モデル、BpeatとBCalを用いた。二つとも[Christen, J. A., 1994. Bayesian interpretation of radiocarbon results. Ph.D. Thesis, University of Nottingham, Nottingham]で開発されたC14年代モデル組成におけるベイジアン・フレームワークに依拠し、Markov Chain Monte Carlo (MCMC)反復法によって年代モデルを計算した。
本論文は、北欧にある降水涵養性(ombrotrophic)泥炭湿原5地点の年代記述を行う。これらの観測点はACCROTELMプロジェクト*におけるもので、同プロジェクトの目的は完新世後期の気候変化を再現することである。 5地点: イギリスのバタバーン・フロー(Butterburn Flow)、デンマーク のリッレ・ヴィルドモーセ(Lille Vildmose)、ドイツのビセンドルファー・モア(Bissendorfer Moor)、エストニアのマンイキャルベ湿原(Männikjärve Bog)、 フィンランドのコントランラフカ(Kontolanrahka)、アイルランドのバリダフ湿原(Ballyduff Bog)、スペインのペドリド(Pedrido)。付録にACCROTELM研究プロジェクト5箇所のAMS C14年代測定データリストが収録されている。
* : Abrupt Climate Change Recorded Over The European Land Mass。ACCROTELMプロジェクトはEUのFP5(第5次フレームワークプロジェクト)の資金によった。
結論 - C14年代の間隔が非常に狭いシーケンスに限定する限りは、泥炭堆積物中のC14年代から得るC14較正曲線の再構成とwiggle-matchingは有効であるといえる。そのために、 同質の各層位単位の泥炭蓄積速度を精確に再現するために十分なC14年代が含まれるような材料を選択するとはいっても、泥炭堆積物の大型化石構成物を基準として層位境界を定めるのは困難で主観的な決定に頼らざるを得ない。 このため、(1)堆積速度変化の推論についていえば、植生構成の関連性がないものを除外して重要なものだけを系統立てて選択することが困難、(2)異なる植生構成単位間の推移がピート層位の数cmに及ぶ可能性がある、という問題 のあることがわかった。その例は、エストニアのマンイキャルベ湿原における泥炭構成のSphagnum fuscum–S. capillifolium ssp. rubellumからS. fuscum–S. balticumへの変化。
Abandonment of farmland and vegetation succession following the Eurasian plague pandemic of AD 1347–52 (2007)
J. of Biogeography (2007) 34, 575-582
AD 1347-52年のユーラシアにおけるペスト流行後の農地放棄とその後の植生
本研究は、EU第5次フレームワークプロジェクト(FP5)予算によるACCROTELM (Abrupt Climate Change Recorded Over The European Land Mass)の一環として実施した。
著者 - Dan Yeloff(ダン・イェロフ)、Bas van Geel: アムステルダム大学生物的多様性生態系動態研究所(IBED)
Dan Yeloff - アムステルダム大学古生態学・景観生態学部Ph.D.。主研究対象は北欧及び亜南極における過去特に第四紀の植生変化への人間活動および自然の原因(気候、火山灰堆積)。
分析の目的 - 中世欧州特に西北欧の黒死病流行時に農地が放棄された後で森林が自然再生した様子を記録、考古学および古生態学研究資料から考察すること。
方法論 - 膨大な数の文献調査。この際土地景観の変化を示す文献を二グループに分類した。(1) 記録および考古学的文献、(2) 過去植生の古生態学的再構成。近年の文献から、中世後期に農地が放棄された後に生態系の変化が 生じたことを示す精確な花粉時系列データ(10年単位ないし中には年単位までの精度)が報告されてきたので、これらも参照した。
結論 - 黒死病期に全ての農地が放棄されたのではなく地域的相違が認められる。西欧のなかには耕作が継続された場所もある一方、アイルランドの2サイトではペストを直接的原因とする人口減少により穀物耕作が中世後期に減少した。 対照的な場所はイギリスとフランスで、1347-1352年のペスト流行期以前すでに穀物生産の減少はあった。その原因は政情不安定と気候条件の悪化による農業経済の危機と考えられる。耕作地の放棄後からペスト流行までの間には、 耕作可能な土地はおそらく牧草地として利用されたようである。ペスト流行後には家畜と労働者の減少により、牧草生産が激減した。その後放棄された牧草地には樹木特に、Betula(カバノキ属) とCorylus(コリラス)種で覆われたようである。 森林は1400年頃に最盛期となった後、農業の復活と森林伐採に伴い衰退していったと見られる。
Mid- to late-Holocene vegetation and land-use history in the Hadrian’s Wall region of northern England: the record from Butterburn Flow
The Holocene 17,4 (2007) pp. 527-538
イギリス北部Butterburn Flow(バターバーンフロー)の記録に基づく、ハドリアヌスの長城{ちょうじょう}地域における完新世中期から後期の植生および土地利用史
著者 - Dan Yeloff(ダン・イェロフ)、 | Bas van Geel、Peter Broekens(ペーター・ブリューケンス)、Johan Bakker(ヨハン・バッカー): アムステルダム大学生物的多様性生態系動態研究所(IBED) | Dmitri Mauquoy(ドミトリ・マウクォイ): アバーディーン大学地理学・環境学部
方法論 - 泥炭地層から得た花粉のグロニンゲン大学のAMSによる14Cデータ14個についてwiggle-matchingを実施。同地域における植生変化の従来の分析の文脈の範囲で分析結果の解釈を行った。
論文は試料の測定結果である14C年代一覧表を含み、ベイジアン統計手法を用いて較正曲線にベストフィットする地層各セクション毎に堆積速度の推定を行った。 Bpeatモデルに用いた測定パーセントをF統計量(F statistics)として表現した。BBコアについてのF統計量は84.97%とIntCal04較正曲線によくフィットすることがわかった。 結論として、AMSによる14Cデータにwiggle-matchingを用いた分析手法による限り、当該地域の植生と土地景観変遷を精度+/-十年間までの良好な推論を行うことができたとして、植生と景観の変遷をまとめている。 本研究は、欧州連合第5次フレームワークプロジェクト(FP5)におけるACCROTELM(Abrupt Climate Change Recorded Over The European Land Mass) の資金援助により行われた。
ウンシュ博士による寄稿論文
"Wiggle Matching and the Milankovitch Hypotheses (2006), Class Notes, MIT"
「Wiggle Matchingとミランコビチの仮説について」
(この論文はもとは2006年11月26日のMIT地球大気惑星科学部のクラスノートとして公開されているもので、論文掲載専門誌の版権を保護するため、寄稿論文には一部の図が省略されています。 本サイト掲載の目的は、例えば上記のヴァンヘール博士による年代推定ではwiggle-matchingが好まれて用いられていますが、この方法論にも限界があることを客観的に見るためです。 ウンシュ博士の論文ではwiggle-matchingとミランコビチ仮説に内在する問題点が記述されています。)
現在の気候研究では生じないかさほど重大ではない問題が、古代の気候研究にあることがわかっており、三種類の問題点が知られている。
1. 極めて間接的な場合がある気候指標の物理的解釈
2. 複雑な数値モデルの精度
3. 「年代モデル」問題である時間ではなく深度の関数である測定データに年代を割り当てる問題。
本論文では3種類のうち年代モデル問題について見る。この際、wiggle-matchingと ミランコビチ仮説を用いる場合に生じる問題点をとりあげる。
古代気候学の文献に共通する点は、wiggle-matchingにより分析者が特定のパターンを認識「したい」という願望が前提となっている。wiggle-matchingの仮説とは、2個の記録データに類似の変動があれば、これらを 同一とみなし、当該の変動が年代測定の不確実性の範囲内に揃えることができるという推論を行ってもよい、というものである。しかし、記録データがそろうはずであるとはあくまでも仮説上のことで、仮説自体は証明も反証もできないものであるから、 前提が事実ではないことを常に認識していなければならない。
2つの記録データに類似の周波数が含まれるような場合、2つの関連しない記録データに必然的に関連する波動があるように見えることを示すのは実際に容易である。 2つの記録データに類似の周波数が含まれる場合には、平均的には、2つのデータが任意の区間で平均のまわりに同じ回数の正負うねりがあるといえる。従って、任意の有限記録データ区間で対応する最大値と最小値の間に線引きを 行うことがほとんど必然的に可能になる。しかし、最大値と最小値がが同一の事象を示すことを証明するには、さらに強力な証拠データが必要となる、という問題を指摘できる。
一方、ミランコビチ仮説については、wiggle-matchingとは別の人間の心理が働く。それは世界が予測可能であるべきだという理解できる願望である。すなわち、ある事象が 生起すると、その生起の理由を説明でき、望ましくは推論を筋道だてて説明できるはずだというものである。 しかし事象の中には因果関係では説明できないものがある。
ドゥアン博士による寄稿論文
Approximating GARCH-Jump Models, Jump-Difusion Processes, and Option Pricing, Mathematical Finance 2005
近似GARCHジャンプモデル、ジャンプディフュージョンプロセス及びオプションプライシング

学者 - Jin-Chuan Duan(ドゥアン・ジンチュアン): Rotman School of Management, University of Toronto, Ontario, Canada (トロント大学ロトマン経営学院、カナダ) | Peter Ritchken(ピーター・リチケン), Zhiqiang Sun(ジチアン・スン): Weatherhead School of Management, Case Western Reserve University, Cleveland, Ohio(ケースウェスターン大学ウェザーヘッド経営学院、米国オハイオ州クリーブランド)
スポンサー: カナダ政府人文社会科学研究委員会、カナダ政府自然科学工学研究委員会

主目的 : オプションプライシングにおいてジャンプがあり資産価格とボラティリティーにはこれと相関するジャンプがあるという前提をもとに、 近似GARCHジャンププロセスによるオプションプライシング理論を導出する。同考察においては極限ケースを想定する。この際資産価格とローカルボラティリティー が相関するジャンプサイズを伴うジャンプディフュージョンプロセスに従う。GARCHオプションモデルのうえにジャンプを伴うストキャスティック・ボラティリティー モデルおよびジャンププロセスを伴う極限GARCHを用いて理論を導出する。
その他目的 : ジャンプモデルのほうが連続時間モデルより優れていることを証明すること。

本稿は極限モデルを導出するが、この目的は、閉じられた価格決定公式を得ることとは無縁であり、 ここでは離散時間型ボラティリティーのジャンプを伴うまたはこの逆の場合の、新たな連続時間オプションモデルについて理論的な理解を深めること。

極限モデル組成の際依拠する離散時間モデルは、Duan, J., P. Ritchken and Z. Sun (2004)(以下ではDRS2004と表記する): Jump Starting GARCH: Pricing and Hedging Options with Jumps in Returns and Volatilities, Working Paper University of Toronto and Case Western Reserve Universityにおけるモデルを用いる。

戦略: 離散時間型2項式オプションプライシングモデルと見比べやすい近似GARCHジャンプオプションプライシングモデルを導出する。 その理由は、2項式モデルは極限をうまくとれば、ディフュージョンプロセスでもジャンププロセスでも近似しやすく、 ヨーロッパオプションと米国オプションのプライシングを行いやすい。 近似GARCHジャンプオプションモデルが資産価格とボラティリティーの両方にジャンプとディフュージョン要素を一体化したさまざまなストキャスティック ボラティリティーモデルを導出できることを証明する。

GARCHジャンププロセスを用いる利点 - いくつかのGARCHジャンププロセスを用いて生成されたオプション価格は、 連続時間プロセスによるオイラー離散化スキームを用いて計算されるオプション価格より素早く理論上の連続時間オプション価格に収斂しうる。 現実的には連続時間ジャンプディフュージョンプロセスが価格とボラティリティーの両方にあてはまることは確かかもしれないが、 近似GARCHジャンプモデルを用いれば現実のプロセスにおけるオプション価格計算のために優れた手段となりえる。

極限モデルを用いる主な理由
極限モデルがもつ分析に役立つ利便性を活用すると、例えば、オプションの一部についてプライシング公式を導出できる。 本稿では3種類の極限モデルを示すが、これらはヨーロッパオプションについてプライシング・ソリューションを提供しない。 しかし、閉じられたプライシング・ソリューションを得られないことは弱点とはいえない。 たとえば、ボラティリティーが定数であるようなブラック・ショルズ(Black-Scholes)の枠組には米国型オプションに適用できるような閉じられたプライシング 公式はない。とはいっても、ブラック・ショルズ(Black-Scholes)モデルがこのために応用できなくなるというわけではない。

要旨: 1990年代までは金融派生商品のモデルで特に駆使された連続時間モデルと実証分析で多く用いられた離散時間型モデルに関する文献はほとんど 相互が孤立して議論を展開していた。離散時間型モデルではGARCH(generalized autoregressive conditionally heteroskedastic)型が用いられ、連続時間モデルは拡散モデルをよく用いていた。 1990年代初頭には研究レベルではこれら二者のアプローチを融合させる取り組みが始まった。特にNelsonは1990年にGARCH Models as Diffusion Approximations(Journal of Econometrics 45,7-38)において、標本抽出頻度が高まると、いくつかのGARCHモデルにおいて生起するvolatilityプロセスが、ストキャスティック微分方程式の解に収斂することを証明して見せた。この議論を発展させ、1997年にAugmented GARCH(p,q) Process and its Diffusion Limit(Journal of Econometrics 79,97-127)において、従来資産所得とvolatilityのモデル形成のために用いられていたbivariateディフュージョンモデルの大部分がGARCHモデルファミリの極限を用いて表すことができることを証明した。従って、bivariateプロセスを用いて資産価格とvolatilitiesのモデル形成を行いたいような場合でもGARCH手法を用いたほうが有利であると見られる。一般化GARCHプロセスの変数を適度に減らせば、次の各文献のストキャスティックvolatilityモデルを用いて、ヨーロッパオプション価格と米国オプション価格を得ることができる。 J. Hull and A. White(1987), The Pricing of Options on Assets with Stochastic Volatility, Journal of Finance 42, 281-300;
Scott, L. (1987) Option Pricing When the Variance Changes Randomly: Theory, Estimation and An Application, Journal of Financial and Quantitative Analysis 22, 419-438;
Wiggins, J. (1987) Option Values under Stochastic Volatility: Theory and Empirical Evidence, Journal of Financial Economics 19, 351-372;
Stein, E., and J. Stein (1991) Stock Price Distributions with Stochastic Volatility: An Analytic Approach, Review of Financial Studies 4, 727-752;
Heston, S. (1993) A Closed-Form Solution for Options with Stochastic Volatility, Review of Financial Studies 6, 327-344.

ジャンププロセスを用いる理由 - 実際の株価形成プロセスには二変数の拡散特性を想定するには無理があり、価格とボラティリティー ともにジャンプ要素を用いないと現実にマッチしなくなった。ボラティリティーにジャンプが内在するからである。近年にはボラティリティー にジャンプを加えて分析することによりS&P500とNasdaq100インデックスの収益性データを、資産価格におけるジャンプだけを用いたストキャスティック・ボラティリティー モデルよりもうまく説明できるようになった。

考察展開の手順
1 極限まで短縮する売買時間間隔におけるプライシングカーネルと資産価格の動態のための前提を定める。その手段として、時間間隔要素を導入してDRS2004のモデルを近似モデルに拡張する。DRS2004モデルの一般化により極限化の過程を分析できる。
2 次に拡張DRS2004モデルのうちいくつかの極限ケースを詳しく分析する。これらのモデルとは、価格とボラティリティー両方について拡散要素とジャンプ要素を含むプロセスに収斂するものを選んだ。同モデルでジャンプを閉じることで、標準的近似GARCHプロセスに絞り込むことができる。ボラティリティーが確率に依存しなくなる一方で価格にはジャンプを想定できるように、近似GARCHプロセスの簡素化を行うと、同極限モデルはジャンプ拡散モデルまたは一般化モデルを含むようになるが、本稿の主眼は、この極限モデルが価格とボラティリティーともに拡散要素とジャンプ要素を含むようなもっと一般適用性におかれている。これらの導出過程において、フォーカスは均衡モデルにある。この均衡モデルにおいては、価格の動態が物理プロセスでもリスク中立プロセスでもともにうまく表現できる。
3 オプション価格収斂速度を示すように構成されたシミュレーションテストを行う。実際の価格を用いて、オイラー・スキームと本稿のGARCHジャンプ近似スキームから得る価格の比較を行い、GARCHジャンプ価格がジャンプ拡散極限値に収斂する速度を示す。
4 結論 - 物理的な確率計測による動態を確立したのに加え、リスク中立的動態も特定できた。その結果得た極限モデルそれ自体は興味深いものであり、オイラー近似スキームより素早く連続時間スキームに収斂し、さらに、離散時間GARCHジャンプモデルをストキャスティック・ボラティリティーとジャンプに関する膨大な文献ともうまく折り合いをつけることができる。オプションに関する近似GARCHジャンプモデルは、特別な極限ケースについていえば、ジャンプ拡散モデルと拡散ストキャスティック・ボラティリティーモデルを含む。価格とボラティリティーの両方にジャンプを許容するモデルの極限ケースを構築して、Duffe, D., K. Singleton and J. Pan (1999) Transform Analysis and Asset pricing for A±ne Jump Diffusions (Econometrica, 68, 1343-1376)に準拠するかたちでオプションプライシングが可能になる。

GARCHジャンプモデルの弱点は、大部分がモンテカルロプライシングに依存する点である。 アフィンモデルのクラスの範囲でも、GARCH近似プロセスがプライシングの要求に効率のよい数値スキームを提供するのに役立つと思われる。

本稿の結論はNGARCHまたはTGARCH更新スキームのいずれかに基づくローカル・ボラティリティー更新方程式が想定されていた。 しかし我々の理論はこれら二者択一更新スキームに限定されるわけではなく、他のスペックも検討できる。

本稿で概要を述べた近似GARCHモデルを用いる価格とボラティリティーのための代替ジャンプ拡散モデルの評価を行う将来の実証研究に譲る、と結論する。