式(18)において上の漸近値を代入すると,自身によってだけの貢献を受けている。同様に,およびからは各々および0.642(=標準偏差)だけの貢献を受けている。これらの値を棒グラフで示したものを,インパルス応答とともに図4に示す。
 のグラフでは,ほとんどの貢献は自身によってなされ,(cholと記述)が少々の貢献をしている。およびに貢献していない。
 のグラフでは,主たる貢献は,自身およびであり,を下げる方向へ働く。は少しだけの貢献をし,はほとんど貢献していない。
 のグラフでは,およびが大きな貢献をし,を下に押し下げる。を少しだけ下に押し下げ,を少しだけ押し上げる。
 のグラフでは,が主たる貢献をし,が小さく貢献している。自身やの影響は無視できる。
 金融波及メカニズムに関して,中川[11]は,mか
らyへの貢献と,lからyへの貢献を区別することの困難さを強調した。この理由は,mからyへの貢献に関して,(i)lを経由するm→l→yのチャンネル,(ii)lを経由しないm→yのチャンネル,の2つを峻別する必要があるからである。中川は弱外生性の概念を導入し,mとlのダイナミックスに他の変数からのフィードバックを遮断したインパルス応答を計算して,遮断しない場合の応答波形と比較検討することにより,クレディットチャンネルの優位性を主張した。
 幸いなことに,我々の手法では貢献度の漸近値が具体的に求まっているので,への貢献を中川の場合よりもより直接的に調べることができる。式(21)より,から,およびからへの貢献度は各々,0.339と0.059である。ただし,=−0.0058および=−0.0076である。マネーの貢献度0.339を分解することを考える。銀行貸出の貢献度0.059のすべてが,マネー0.339から出た分で実現されたと考える。一方,のグラフにおいて,からへの貢献度が無視できるほど少なかったことを念頭におく。以上の2つから,への貢献0.339の中で銀行貸出を経由しないものは,下限(0.339−0.059)を持つ。
 マネーチャンネルとクレディットチャンネルの比は次の関係を満たすことになる。



 考察期間[1975:1,1997:4]では,マネーチャンネルがクレディットチャンネルよりも優位性を持つと結論付けることができる。
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