3 実証分析
 時間区間を[1975:1,1997:4]に取って,金融波及効果を調べる事にする。
データ
 Nikkei Needsデータベースによる[1975:1,1997:4]までの四半期データを扱う。 データのリストは,実質GDP,マネーサプライ十CD,銀行貸出,GDPデフレータおよびコールレートとする。コールレート以外は季節調整済みである。マネーサプライと銀行貸出はGDPデフレータによって実質化し,さらにコールレート以外の変数には自然対数を掛けておく。変数の記号は以下の通りである。

y(t)= ln(実質GDP) ,
p(t)= ln(GDPデフレータ) ,
m(t)= ln (+CD) - p,
l(t)= ln (銀行貸出) - p,
r(t)=コールレート,

単位根テスト
 ADF検定[13]を事前テストとして行い,対象となる各変数がトレンドを伴っているか否かを調べる。
その結果に基づいて,単位根を帰無仮説としてERS (Elliott - Rothenberg - Stock)検定[14]を実行する。遅れ次数はAIC規範により決定される。次に,定常性を帰無仮説としてKPSS検定[16]を行い,先のERS検定と組み合わせて検定力を高めることにする。
 表1はr(t),m(t),l(t)およびy(t)に関する単位根検定の結果である。r (t)については,単位根は棄却されず,同時に定常性も棄却されない。ERSテストにおける10%臨界値は-2.764であり,テスト値-2.682と近い。一方,KPSSの10%臨界値0.119も,テスト値0.091と近い。したがって,r(t)は定常,非定常のどちらの可能性も含んでいる。以下では,r(t)を定常とみなした場合と,非定常とみなした場合の2通りにおける解析を行う。
 m(t)については,単位根は10%有意レベルで棄却され,定常性は5%有意レベルで棄却される。この場合も定常,非定常の両方の可能性があるが,有意レベルの5%を重視して,非定常とみなすことにする。
 l(t) およびy(t) については,単位根は棄却され

表1 Unit Root Test〔1975 : 1,1997:4〕
var.
ERS
lag
KPSS
additional regressors



y
-2.682
-2.952*
-0.563
-0.497

10
10

  0.091
  0.204**
  1.224***
  1.248***
const.and trend
const.and trend
const.
const.
***,**および*は各々1%,5%,10%の有意レベルとする。臨界値はElliott-Rothenberg-Stock(1996)とMacKinnon(1996)[15]を組み合わせて得られたもの,ならびにKPSS(1992)によるものである。遅れ次数はの範囲でのAICによって決定されている。
 
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