北海道における地域開発計画と企業立地に関する
経済地理学的研究 |
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― 道内食品工業の立地行動を事例として ―
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菊 地 達 夫
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I はじめに 戦後,北海道における地域開発計画は,農業地域開発を主として行い,高度経済成長期の終盤で工業地域開発にも目が向けられるようになった。とりわけ,大規模な工業地域開発として,1970年代の苫小牧東部地域開発計画,石狩湾新港地域開発計画を挙げることができる。両地域開発計画は,開発主体こそ相違するが,港湾建設し,後背地に工業をはじめとする産業集積を目指した点で共通する。以後,道内各地では,中小規模の地域開発計画がみられた。他方,企業立地や企業集積は,いずれの地域開発計画でも苦戦している1)。 北海道における地域開発計画や企業立地,企業集積に関する研究は,経済学,経営学,地理学などの諸分野でみられる。中でも,経済学的視点における小田の一連の研究2),地理学的視点における山下の研究3)が示唆に富む。また,菊地における一連の研究4)では,石狩湾新港地域を調査地域として,地域開発計画の変遷,策定過程,企業立地・企業資本・地域労働力の実態,土地開発企業の再編過程について地理学的考察をしている。いずれの研究でも,地域開発計画の策定やその展開についての全体像を考察している。しかしながら,特定の立地企業に焦点をあてたものはほとんどない。 本研究では,石狩湾新港地域を調査地域として,道内の基幹工業である食品工業を取り |
上げ,企業調査の結果を中心に経済地理学的な考察を進める。具体的には,石狩湾新港地域開発計画の概要に触れ,道内における食品工業の動向,調査地域に位置する食品工業の分析を行う。また,特定の調査企業として,道内資本の食品工業を取り上げる。ここでは,企業の経営内容,流通過程,労働力を指標として,地域的特色を浮き彫りとする。研究資料は,公的行政機関,調査企業の提供資料と調査企業への聞き取り調査結果を用いる。 II 石狩湾新港地域開発計画の展開 石狩湾新港地域の地域開発計画は,明治期より幾度かの計画を示してきたが,一部を除き昭和初期までその施行実現をみることはなかった5)。それら地域開発計画の目的は,計画した時期の社会的背景や地域の実態により,排水(治水事業),貨物搬出,港湾・後背地と様々であった。また,港湾建設は,概ねの地域開発計画案に盛り込まれていた。 これらは,石狩川河口域との関連において浮上したものが多く,産業的土地利用を前提としたものは少ない。 戦後に入ると,暫くは具体的な地域開発計画が策定される動きはなかった。ところが,国内における木材需要が急速に伸び,状況は変わった。北海道では,需要の伸び,に対して,台風における倒木で打撃を被り,大きな岐路に立たされていた。そこで,不足分を補う北洋材の輸入が |
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