集団化立地は,機械金属工業,倉庫事業,運送事業など6つの協同組合で170社(1999年現在)に達している。全体としては,道内資本の立地が中心であるが,道外資本も広く分布しており,遠くは九州地域までにおよぶ。道内資本は,住宅,建設,食品工業といった分野でいわゆる基幹工業と認識されているものが多い。
 今後は,未分譲地の減少や立地企業の促進に一層の期待がかかるものの,これまでと同様な方法では脱却できない。そこで,土地分譲価格の減額や借地といった方法ですすめている。とりわけ,借地は,消極的な方法であるが,国内外の産業地域との競争,低経済成長期にあって,好評を得つつある。

  III 北海道における食品工業の概要
 ここでは,既存資料をもとに北海道における食品工業の動態について明らかにする。分析時期は,次章の調査企業の活動時期と重なる1990年代以降を取り上げたい。具体的には,北海道における食品工業の事業所数,従業員数,出荷額を指標として,大まかな地域的特色を浮き彫りとする。資料は,経済産業省・総合企画部経済企画室統計課による工業統計調査および北海道商工労働観光部食品工業課,経済部地域産業課による食品工業動態調査報告書を用いる。前者は,市・支庁別の統計まで把握できるが,町村別の詳細なところまで網羅していない。後者は,道内に位置する食品工業へのアンケート調査をもとに統計処理したものである。アンケート項目は,多岐にわたっており,その結果は示唆に富む。しかしながら,回収率は,毎年70%前後に留まっている。いずれの資料も,詳細な点において検討の余地はあるが,大まかな地域的特色をつかむことには十分絶えうる。
 1990年以降,北海道の製造業の中で食品工業の占める割合は,事業所数,従業員数,出荷額において概ね30%前後で最も多く,基幹産業の地位を維持する。地域別では,渡島支庁,網走支庁,石狩支庁,後志支庁で食品工業の占める割合(事業所数)は高い。
 従業員数と事業所数の全体的な推移(第1図)をみると,1990年代前半まで増加傾向を示している。1994年以降,従業員数は,微増減を繰り返しながら,大幅な数値の変動はみられない。それに対して事業所数は,1993年に入ると,減少傾向となり1998年まで続く。1999年には,一時的に増加するものの,翌年(2000年)には再び減少に転じた。1事業所の従業員数(1999年)は,10〜29人の規模が最も多く,4〜9人の規模,3人以下と続き,これらで半数以上を占める。
 次に出荷額(第2図)をみると,事業所数の推移と同様に,1990年代前半は増加傾向を示したものの,それ以降,ほぼ一貫とした減少傾向になうている。また,農産物加工の出荷額は,水産物加工の約3倍となっている。とくに,事業所数の立地が多い石狩支庁,網走支庁,渡島支庁,後志支庁といった地域のいずれも,農産物加工が水産物加工を上回っている。石狩支庁を除く3支庁は,網走・紋別,函館,小樽といった主要な港湾を有する地域でもある。これら港湾の後背地は,水産物加工の集積地になっている8)。水産物加工の出荷額は,集積地を含む支庁でも低迷している。
 北海道における食品工業の動態は,概ねバブル経済期を経て平成不況期に移行した影響を受けている。結果として,好況期には,事業所数,従業員数,出荷額のいずれにおいて増加傾向を示し,不況期には,事業所数と出荷額において顕著な減少傾向となった。また,財政基盤の貧弱
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