な小規模な企業は,経営悪化に陥りやすい。加えて,小規模な企業は,総じて少人数の経営となりがちである。すでに述べたように,北海道では,少人数の経営が多い。そのため,事業所数の減少は,中規模以上なところより小規模なところで多いと考えられる。 IV K企業石狩工場の立地行動 (1)調査企業の概要 K企業は,1992年,S企業のグループ企業として設立した。当初の業務内容は,レストランを中心とした飲食店経営と食品卸販売であった。1996年,S企業の経営改革方針が提起され,石狩湾新港地域(石狩)および岩見沢の生産工場とデリカ部門をK企業に移管した。新体制となったK企業は,黒字化を目指し,自立的決断と自社努力をテーマとして経営に取り組んだ。その成果として,1998年には不採算のレストランと飲食部の廃止,岩見沢工場と八軒卸出荷センターの閉鎖をした。一方,設備更新は,主として大豆や納豆の加工で行っている。翌年(1999年)には,デリカ部門をS企業本体に返還した。また,食品卸部門では,新事業の設備投資に取り組んだ。さらに,全道に位置するS企業を対象とした漬物・惣菜・畜肉加工品に着手し,精米センターとして新たなに苫小牧]二場を立地した。苫小牧工場の立地は,S企業をはじめとした関連企業の合意を受けたことが大きい。 現在,K企業は,石狩工場と苫小牧工場を有し,製造,食品卸,物流,商品検査といった多角的な経営をしている。とりわけ,石狩工場の製造部門では,米飯商品,冷凍商品,大豆製品,製麺,コンニャク・白滝,鮫子,納豆を主力とする。これら原材料は,一部道外産があるものの,道内産が中心である。その他として,北広島市に位置 |
するH企業の販売委託も行っている。H企業(1993年設立)は、障害者の雇用と知的障害をもった人たちの自立支援を目的とした第3セクターで,S企業や自治体が出資をしたものである。H企業の代表取締役として、K企業のI氏(代表取締役)が兼務している。さらに,環境面として,2000年には,IS01401を取得した。具体的には,電気水道,重油の使用量について適量使用を実現するに至り,経費削減にもつながっている。 以上,K企業は,単なる切り捨て的な合理化ではなく,成長部門と衰退低迷部門を見極めた経営努力を短期間で行い,優良企業に導いた。結果として,販売先は全道各地に拡大し,安定性ある業務内容を構築できた。また,営利的な生産流通企業としての発展だけではなく,福祉や環境といった今日的課題にも間接的に取り組んでいる。 こうした企業活動について,石狩市長も評価している。K企業の先駆的な取り組みにならい,市民への環境認識の向上や学校教育(工場見学)への貢献にも期待を寄せている。また,次章でみるように従業員の勤労意欲を生み出すことにもつながっており,社員意識の向上にも波及している。 (2)K企業石狩工場の再編 K企業石狩工場は,もともとはS企業の一生産部門であった。石狩工場の生産活動は,K企業の設立以前より行っていたことになる。そこで,S企業における経営戦略に焦点をあてながら,どのように石狩工場の再編を行ったかについて述べたい。なお,研究資料としてS企業の社史を用いた。S企業は,主として流通・小売業に特化してきた。1970年代後半,道内における流通・小売業の経営環境が急速に変わりつつあった。その要因は,道外大手資本のチェーンストアの立地が,1970年代後半,大都市を中心にすすんだことである。 |
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