障害者地域生活の要件としての社会資源
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豊 島 律
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はじめに 近年,障害者への対応は,「施設解体」ないし「脱施設化」,すなわち,施設入所から地域において生活支援を行っていく方向へと大きく転換されるという流れの中にある。 2002(平成14)年に終了した「障害者プラン」に引き続いて示された「障害者基本計画」 (2003(平成15)年から実施)においては,施設体系を施設機能の在り方を踏まえた上で抜本的に検討するとしながら,入所施設について「地域の実情を踏まえて,真に必要なものに限定する」と表明し,その一方で,「障害者が地域において自立し安心して生活できることを基本にその基盤となる住宅,公共施設,交通等の基盤整備を一層推進するとともに,障害者の日常生活の支援体制を充実する」ことを,「重点的に取り組むべき課題」の「活動し参加する基盤の整備」第一番目にあげた。また,現在国会に提出されて議論に付されている「障害者自立支援法(案)」においても,「総合的な自立支援システム」と銘打った体系によって,地域生活支援という課題への対応が中心すえられている。これらのことにもそれが確認できよう。 ところで,障害者の生活を地域で支援していくという考え方は,50年近くも前のデンマークにおいて,当時の知的障害者施設の“普通でない暮らし”に対して改善の声があがったことを契機に生成した「ノーマライゼーション」理念(注1)にその |
端緒(注2) を見て取ることができるが,その後,この理念は多くの先進諸国においては「脱施設化」(注3) ないし「施設解体」政策として実を結んでいった。 わが国にあって,この「ノーマライゼーション」という用語は,70年代半ばころより知的障害者サービスの分野で徐々に使われ始め,国際障害者年をきっかけに「完全参加と平等」というスローガンに込められた形で,「どんなに障害が重い人でも同世代の市民と同じ水準の教育を受け,仕事をもち,普通の家に住み,結婚し,旅や芸術やスポーツを楽しみ,政策決定に参画する権利がある。障害によってもたらされる不利な結果の究極の責任は政府にある。」(注4)という内容が紹介さ れ,公的文書にも明記されて紹介され(注5)一般化していくが,言葉ばかりが先行し具体化は遅々とした動きで推移することになる。 それから約15年後の1995年につくられた「障害者プラン」は,副題を「ノーマライゼーション七ヵ年戦略」としていたが,依然としてその内容に表現されている行政の考え方は国際的レベルの考え方からは程遠かった(注6)。 また,地域で生き生きと暮らす障害のある人びとの数が徐々に増えていったことも無視できないが,その一方で,実態(注7) としては,1995年度調査以降も施設入所者は増え続けていったのである。 周知のとおり,この「障害者プラン」実行の7ヵ年(1996年〜2002年)は,丁度,ノル ウェー・スウェ |
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