Task-Based Language Teaching の中等教育への応用
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飯 田 浩 行
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はじめに Communicative Language Teachingを効果的に補助するものとしてTask-Based LanguageTeach-ing(以下TBLT指導法)が近年注目を集めている。しかし,教室外でも英語が使用されているESL環境において開発された指導法をそのまま日本の教育現場に持ち込むだけでは,これまでにも注目されては消えていった英語教授法と同じ運命を辿ることになってしまう。TBLT指導法が日本のように教室外では英語が使われていないEFL環境において広く中等教育現場の支持を得るためには,その指導法が生徒のコミュニカティブな英語使用技能の習得を促し,英語教師に指導効果を予見させ,生徒のパフォ一マンスを適正に評価する枠組みと具体的な指導実践例を提示しなくてはならない。また,Rooney(2000)が指摘するように,日本の教科書はTBLT指導法を採用していないので,TBLT指導法を採用するにあたっては,タスクを自作したり,教科書を再編集したりしなくてはならない。そのためにはタスク作成から評価法までTBLT指導法の基礎的な知識を身に付けておく必要がある。 本稿前半では,TBLT指導法の基本的な枠組み,言語習得における効果,リサーチ結果にもとづくTBLT指導法における教師の修正的フィードパック方法,生徒のパフォーマンスの評価方法を概説する。後半では高等教育における導入例か |
らその有効性を,初等教育への導入例からその問題点を,教員養成課程への導入からTBLT指導法の将来性を考察する。 Task-Based Language Teaching 1.Task-Based LanguageTeachingの発達 1980年代にprocedural syllabus, process syllabus, task syllabusという3タイプのシラバスが提唱された(Long&Crooks, 1992)。概して言えば,これらのシラバスは人間の学習プロセスや第2言語習得プロセスに主眼を置いている点でそれまでの言語構造を分解して分析的に学ばせるシラバスとは違っていた。言語を構造的に分解して学習し,ある程度学習が進んだところで再構成する練習を積むという伝統的な指導法に代わり,教師と生徒がタスク達成という目的のために意見交換をする過程で目標言語である英語は習得されるという考え方が採用された。特にTBLT指導法の発展に大きく影響したのはPrabhuが1979〜1984年にインドで行ったBangalore / Madras Communicational Teaching Projectであった。そこでは与えられたタスクの達成に学習者の意識が向けられているときに,内在化された 抽象的な言語原理システムが作動して言語は習得されると考えられ,タスク達成へ学習者の努力を継続させ,学習者の意織を意味の理解に向けさせることが比較的容易なopiniongap, information-gap, |
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