reasoning-gapタスクなど学習者を知的に刺激するタスクが多用された。この考え方がTBLT指導法でも継承され,新しい英語指導法として採用されるレベルにまで研究が進んできたのである。

2.Taskの定義
  TBLT指導法におけるタスクとはコミュニカティブな英語指導法におけるタスクのこと であり,grammar tasks などのように特定の形態素を学習させるための練習におけるタスクを指すのではない。しかし,タスクの定義は一様ではなく,「教師が制御する思考過程を経ながら与えられた情報から最終成果に至ること」(Prabhu,1987),「コミュニカティブ な目的を達するために学習者に目標言語を使わせる言語活動」(Willis, 1996),「学習者のイ ンターラクションによってのみ達成できる目的やメカニズムを持ち,意味中心の情報交換 を目標言語を使って学習者に行わせることを強く求める言語学習」(Lee, 2000),「ある目的に到達するためにコミュニケーションに重点を置きながら目標言語を学習者に使わせる活動」(Bygate, Ske-han & Swain, 2001)など,研究者によって千差万別である。共通しているのは「教師がコントロールするプロセスの中で,ある到達目標に向かって目標言語によるインターラクションの量をできるだけ増やし,意味中心の目標言語使用を学習者に強く意識させる」という解釈である。

3.Task-Based Language Teachingの指導
  原理

 TBLT指導法は,目標言語母語話者との対話を通じて,「言語学習者自身が言語知識や言語使用技能の未熟さを省みるときに目標言語習得は促される」とするInteraction仮説(Long, 1985)と「言語を正確に習得するには目標言語と自分が
現在獲得している段階の目標言語(interlangu-age)とのギャップを意識することが必要条件である」という考え方(Schmidt, 1990, 1995)を基本としている。Swain(1985)はカナダのイマージョン教育における学習者の第二言語発達を長期間観察した結果,Krashen(1985)が主張するインプットに重点を置いた言語学習指導だけでは学習者が文法的に正確な文を発する力は高まらないことを確認した。この観察結果にもとづいて提唱された「学習者に発話を促すタスクを遂行させながら,目標言語母語話者や上級学習者が初・中級学習者の発話内容を確認するために求める追加説明の要求が目標言語の習得を促す」というComprehensi-ble Output仮説(Swain, 1985)もTBLT指導法は指導原理としている。

4.Taskの構成要件
 Ellis(2003)によると,ある言語活動がタスクであると認識されるためには,「実生活と関係のある活動」を前提とし,「学習者に目標言語使用者という意識づけと意味中心のイ ンターラクション」を求め,「4技能のいずれかの活動と情報の取捨選択という認知的過程」を含み,「そのタスクを遂行したことで学習者が何らかの目標言語学習成果を生み出すこと」が必要とされる。この定義をもとに考えるとタスクの要件は表1のようになる。

5.Taskの種類による言語習得効果の相違
 Foster と Skehanは個人的な情報交換をするpersonal information exchange task,一連の絵を使って話を作り上げる narrative task, 与えられた情報をもとに問題解決のための意思決定をするchoice/decision-makingという3つのタスクが与える英語使用の正確さ,英文構造の複雑さ,流暢さにおける変化を2年間(1996,1997)調査した。
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