...and didn't defer himself at all to the Indigo Trade, but said there was no help for it now, and in Mrs. Fielding's summing up, was a good-natured kind of man - but coarse, my dear. (lbid., p.232)
 注: defer himself...to に納得する
    summing up 概評







問題はこの my dear である。これは「ちょっとあなた」とか「だわね」の意味である。つまり直接話法のみに使われる言葉である。これによってこの前の部分までもがMrs. Fieldingの言い種(概評)であることがはっきりす る。文全体の主語は Dot の父親の Old Dot で Mr. (男性)であるのに対して, was a good-natured... 以後は,従ってMrs. Fielding の言葉という二重構造となっている。

・様々な呼び掛け
 この作品の中には様々な呼び掛けがある。my dear!とかmy Bertha! (lbid., p.224) とか。このmy Bertha! は何と訳すればよかろうか。日本語では「バーサったら」か。バーサに関するepiphanyの後の,父親の言葉であるから 「バーサ」でよいか。ともかくこれはドラマ性の一つの要素だと考えられる。

 Little woman, how she sobbed again! John Peerybingle would have caught her in his arms. But no; she wouldn't let him. (Ibid., p.228)




下線部は作者からの読者への語りかけである。またLittle womanは作者のDotへの親しみを込めた呼び掛けである。
・名詞止め

 The look that Tackleton bestowed upon him, and the start he gave! (lbid.,p.229)



上のような名詞止めも,語り掛けから発展したものと考えることができる。

 4. 言葉の面白さ
・しゃれ
 同じ言葉を使って別の意味にしたり同じ言 葉で二様の解釈をする場合である。最後の方 でDotの母とFieldingの母とが出会う場面は 次のようである。

 Then, Dot's mother had to renew her acquaintance with May's mother; and May's mother always stood on her gentility; and Dot's mother never stood on anything but her active little feet. (lbid., p.232)
注: renew her acquaintance with 旧交を
   暖める
   stood on を誇る,の上に立つ








この一つ目のstood onは「を誇る」だけの意味であるのに対して,二つめのstood onは「を誇る」と「の上に立つ」の二つの意味が重なっている。その意味でしゃれである。
 最後に皆でパーティーをするが,それに居合わせようとJohnは自分の代理人と犬と馬に仕事を任せて来てしまったが,無責任な代理人は犬と馬を仕事先の酒場で置きっ放しにする。犬は大いに不満で初めはその酒場の暖炉の前に上がり込んで寝そべっていたが,あと馬をけしかけて独断で勝手に帰ってくるのである。
その時の描写:
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