販売先は,道内各地のS企業および関連企業に運ばれる。主要な販売先地域は,札幌,旭川,函館の3地域で道内の大都市を占める。その他の市部として,道央地域は小樽市,石狩市,岩見沢市,千歳市,苫小牧市,室蘭市,道北地域では稚内市,留萌市,富良野市,道東地域では,帯広市,釧路市,北見市,網走市と点在する。町村部では,余市町,倶知安町,白老町,浦河町,江差町,遠軽町となっている。道内の14支庁所在地は,すべて網羅している。さらに,道外にも販売されている。輸送には,冷蔵庫を有したトラックで運ばれる。
 原材料先では,道内資本であるK企業の意識が強く反映され,一定の独自性を示している。むろん,世間の安全性に対する食品への意識が向上したこともあるが,品質へのこだわりとともに地域貢献も重要視した。販売先地域は,道内各地に対して供給され,原材料同様な傾向を示している。しかしながら,その多くは,道内外ほとんどS企業または関連企業であり,地域貢献を優先したとは一概に言い難い。販売先地域は,安定性があるものの,S企業の経営動向に影響する。K企業は,S企業から完全独立をしたものの,関連企業の位置付けは変わらず,販売先を簡単に調整することはできない。このことは,先のりストラクチャリングの動きをみても明白であろう。
 他方,K企業は,完全なるS企業の下請け的な生産拠点となり,地域貢献を無視した販売体制にはなっていない。販売先地域の他に,環境や福祉に対する取り組みも,S企業の流れを引き継いだものである。K企業として独自色を強めるような販売網は難しいが,製品には地域貢献を意識した取り組みを確認できる。例えば,製麺類のラーメンの商品名として「快風丸」としたものがある。
この名称は,明治初期に日本海を航行していた船舶名に由来する。石狩を含む日本海岸は,明治期,にしん漁の豊漁にわき,地域経済が繁栄した。このような地域経済の繁栄は,ラーメンの賛沢なイメージに重なるものと考えた。微細な試みではあるが,石狩の地に根付いた工場である証を製品に示している。

 V K企業石狩工場における地域労働力の
   実態

 本章では,具体的な地域経済への貢献を探るために調査企業の労働力実態を解明する。本章で使用する従業員数はその居住地数のものと一致していない。これは,居住地の調査時において,常勤従業員数に非常勤従業員数を含んだためである。
(1)従業員の年齢構成と居住地分布
 まず,年齢構成について述べたい。年齢構成は,20歳未満5名,20歳代40名,30歳代71名,40歳代107名,50歳代214名,60歳以上が10名となっている。全体として,中高年従業員が多く,若年従業員数は少ない。性別では,男性111名に対して約3倍の336名が女性である。女性の年齢別をみると,50歳代164名で最も多く,40歳代78名,30歳代60名と続く。
 聞き取り調査によると,大きく2つの点で従業員の特色を有する。1つは,現業職に女性従業員が多いことである。とりわけ,交代制の勤務で深夜も加工しており,その時間帯の勤務に中高年の女性従業員が多い。一時的な募集でも,深夜の応募数は多い。これは,食品加工といった軽作業が多い点,次節で述べる通勤手段が確保されている点が主な要因となっている。もう1つは,60歳以上の定年退職以降でも,個人意思で
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