継続勤務が可能な点である。こうした企業の姿勢は,全従業員に対して業務への積極性を後押しする。昨今,人員削減的なリストラクチャリングが横行する中で企業努力として高く評価できる。
 次に,K企業石狩工場に勤務する従業員が,どのような地域に居住しているのか明らかにし,石狩市の雇用創出に貢献しているのか探る。その結果,石狩市232名,札幌市203名,小樽市4名,当別町と江別市各1名,その他2名となっている。札幌市を詳しくみると,手稲区180名,北区11名,西区6名,豊平区3名,東区2名,厚別区1名で,中央区,白石区,南区,清田区にはいない。
 以上から,立地自治体である石狩市が最も多く全従業員の約半数以上にあたる。隣接地域の札幌市も続き,概ね地元周辺の雇用創出に貢献していることが理解できる。札幌市の場合,石狩市に隣接する区域の手稲区が圧倒的に多いが,同様に隣接する北区は一定数に留まっている。手稲区は,K企業石狩工場からの距離として札幌市内で最も近い。しかしながら,その距離差は,北区とあまり変わらない。居住地間の大幅な相違は,単なる地理的空間の差異として説明するのは難しい。
 その他の地域は,総じて距離の遠近に比例して数が少ない。ただ,石狩湾新港地域の一部となる小樽市は,居住者数が極端に少ない。そのため,地元の雇用創出には,あまり貢献していると言えない。小樽市の場合,市街地が東西に長いため,通勤に不便なこと,隣接地域の市内銭函町周辺に工場群が位置することが影響していると考えられる。
(2)通勤手段の特性
 一般的な通勤手段は,自家用車,公共交通機関,徒歩や自転車となる。石狩湾新港地域の場
合,近隣に住宅地はなく,冬季の積雪もあり,徒歩や自転車の通勤は考えにくい。次に公共交通機関は,石狩湾新港地域に路線バスしか手段がない。その路線バス(北海道中央バス)は,JR函館本線手稲駅,地下鉄南北線麻生駅を起点とする。それぞれの所要時間は28分と38分である。しかしながら,いずれも便数が極端に少ない。麻生駅発では,午前7時と9時の2便、手稲駅発では,同じく午前7時と8時の2便しかない。帰路では,石狩湾新港地域内のサポートプラザ発(機械金属)で15時〜19時の毎時1便しかない。結局,昼間勤務以外の通勤には,ほとんど利用できない。
 結果として,多くは自家用車の通勤となっているが,すべての従業員にそれを保有してもらうのは無理である。とりわけ,中高年の女性は,自家用車の保有率は低い。そこで,K企業石狩工場は,送迎バスを運行することで対応している。送迎バスの利用者は85名で全従業員の約20%を占める。また,運行時間帯やルートを多様化することで就業機会の増加につなげている。
 ルートは,手稲駅方面の手稲・花川ルートと麻生駅方面の新琴似・屯田ルートの2路線である。また手稲・花川ルートは,利用者が多いため,奇数月で花川経由,偶数月で手稲経由と送迎順を変えている。乗降目印は,概ね路線バス停付近としているが,居住分布の状況によって特定のランドマーク10)とすることもある。
 運行時間帯は,出勤便として7時15分,19時40分,3時40分,5時45分,退勤便として5時,15時,16時,18時10分のそれぞれ4便となる。これらの時間は,交代制のシフトに準じたものとなっている。
 さらに,送迎バス台数が不足した場合,マネジャーの判断によって,タクシーを手配するような
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