多く,また,利用者の意向に沿うというよりは職員主導で行われてきている。そして,移行後は職員・保護者・利用者とも,肯定的に受け止めるようになっていることが共通して言えることである。また,この地域生活移行を支える考え方,それに基づいた政策,さらにはサービスの質やそれを担保する人材の養成がとても重要となってくると思われる。
II わが国における「地域生活移行」の現 段階 わが国では,「障害者対策に関する新長期計画」が,1993年から2002年までを実施期間として策定された。この計画の具体化を促進するために,その最終年次までに合わせて1996年から2002年の7か年の計画として策定された「重点施策実施計画」(=「障害者プラ ン」)の中で、はじめて「地域生活移行」が示唆された。このプランは,数値目標の不十分さをはじめとしたいくつかの問題点を指摘できるものの,副題を「ノーマライゼーション推進七か年戦略」として,入所型施設中心の福祉施策から「地域でともに生活するために」という施策を展開する上での視点を第一番目に掲げ,国の政策として地域生活支援という方向へ一歩踏み出した。この意味で「障害者プラン」は,わが国の障害者施策の前進の端緒となったと評価できよう。その後,この「障害者プラン」によって地域生活への移行が示唆され前進したものの,地域における支援システムの貧弱さから課題をたくさん残したまま終了年を迎え,さらに次なる政策的整備を必要とした。 次いで,先の新長期訂画における「リハビリテーション」及び「ノーマライゼーション」 の理念を継承するとともに,障害者の社会への参加,参画に向けた施策の一層の推進を図るために引き続いて |
定められた「障害者基本計画」においては,障害者が「社会の対等な構成員として人権を保障され,自己選択と自己決定の下に社会のあらゆる活動に参加,参画するとともに,社会の一員としてその責任を分担する「共生社会」の方向性を打ち出し,活動し参加する基盤の整備の箇所で「障害者が地域において自立し安心して生活できることを基本にその基盤となる住宅,公共施設,交通等の基盤整備を一層推進するとともに,障害者の日常生活の支援体制を充実する。」 として,地域生活移行を現実的課題として示した。また,別の箇所では,「入所施設は,地域の実情を踏まえて,真に必要なものに限定する」とさらにもう一歩踏み出した表現を用いて,その方向性を明らかにしている。 そして,2003年4月から導入された「支援費制度」は,「事業者と対等な関係に基づき,障害のある人自らがサービスを選択し,契約によりサービスを利用する仕組み」とされるもので,地域で生活するために必要なサービスに関わる「居宅生活等支援費」と,障害者施設の利用に関わる「施設訓練等支援費」の二種類からなっており,サービス提供者と契約を結び必要なサービスを活用して,地域で暮らしていくすがたを一つの大きな柱としている。 すなわち,わが国は,障害者プランで緒についた地域生活移行が,新障害者プランと支援費制度の施行・活用によって現実味を帯びてきた段階にあるのだ。 III 障害者地域生活成立要件としての社会資 源と支援 以上述べてきたように,北欧をはじめとする先進諸国にあっては,地域生活支援のための基盤整備の充実によって入所型施設はなくなる方向にあり,地域生活が進展してきている。そして,当初 |
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