実例に目を向けてみよう。 49歳の女性みどりさん(療育手帳B2)は,次女が中学校を卒業し住み込みで働くことになったことをきっかけに(もう一人の長女はすでに別居している)それまで住んでいた母子寮(母子生活支援施設)を退寮することになり,希望に基づいてアパート暮らしを始めた。その暮らしに必要ということでホームヘルプを利用している。支援者は,「支援を開始した当初は,ホームヘルパーに対して警戒している様子でしたが,慣れてきたせいか自分から話しかけてきてくれるようになり,だんだんコミュニケーションがとれるようになって来ました。今後もさらに信頼関係が作れるような支援をしていきたいと思っています。また,現在の問題は,ハムスターを十数匹飼っているのですが,そのハムスターの飼育のための用品に生活費をかなり使ってしまっています。最低限,みどりさんの食費がそこで削られないようにできたらと思います。栄養に関しても,骨が弱いということで,骨粗そう症の予防になるような食生活の助言をしていけたらと思っています。(注29)」と,様子を語っている。 このホームヘルプは,ハムスターにお金をかけてしまうことの中に見られるように,当事者の自立への力を獲得することに向けて働きかける必要がある。そのことに対して,ホームヘルパーと障害者教育の担い手がチームを組んで支援するという形も考えられるが,この方法は,財政難から制度改革論議が起こっていること考慮に入れると非現実的となる。やはり,障害者教育の専門性を併せ持つホームヘルパーが担うことがよりよいことと考える。なぜなら,地域生活の場面は,教育・訓練の場ではなく,生活者としての当事者が主体的に |
生きつつ,生活の中に起こる困難の解決を通して,よりよい生活の質を探求していく場所であり,そのための支援が求められるからである。上記の例は,比較的軽度の障害のものであるが,さらに重度となってくると教育的アプローチに求められる部分がいっそう大きくなっていく。 イギリスのウェールズにおける知的障害のある人たちの地域移行への支援の取り組みをとおして生み出されてきた「アクティブサポートモデル」などは,重度の知的障害者を含めて「生活の質」を高める上で大変示唆に富む(注30)が,これらを実施していくための技術をホームヘルパーが持っていると当事者の地域における「生活の質」は,高められていくであろう。 筆者は,「介護給付」の担い手たるホームヘルパーが,実際の支援の場面において「自立支援」と無関係ではいられない,ということを主張したい。また,その支援は,「ホーム」内におけるそれにとどまらないはずである。したがって,種別を考えたときには,施設福祉型の歴史の中で創りあげられてきた施設に必要な専門職によって提供されてきたサービス,その歴史の上に付け加わってきた「在宅」 ないし「ホーム」サービスは組み替えられたり,新しくつくられたり変革されざるを得ないであろう。精神障害者にあっても,こうした障害の種類ゆえに独自に求められるものがあろう。 また,サービスが大きく再編されていくとき,その担い手のあり様はそれまでのすがたであっては,新たなサービス提供とはなりにくい。たとえば,旧来の施設職員がグループホームの世話人などになる時,それはミニ「施設」となってしまい,利用者主体の暮らしづくりからすれば「似て非なるも |
|
- 9 -
|
||