グローバリゼーションは,新しい世界観をもたらす。ウエストファリア条約以来,国民国家の集合体として見られていた世界が,グローバリゼーションの進展によって,様々な要素が相互に依存しあう一つのシステムとして見られるようになる。そして,古い世界観では,国民国家が,国際舞台の主役であったのに対し,新しい世界観では,諸個人やNGOなどの様々な組織が主役となるのである(Fujikane2003)。 4. 「グローバルシチズンシップ」の意味 ― Heaterの「ワールドシチズンシップ」 概念に基づいて ― 第2節(「シチズンシップ」概念について)で述べたように,「シチズンシップ」は国民国家政府によって保障される法的,政治的権利と強く結びつく概念である。それゆえ,専門家の中には,グローバルレベルの政府機関が存在しない現状において,「グローバルシチズンシップ」概念を提唱することを疑問視する人々もいる。Heater(1999)は,「グローバルシチズンシップ」の概念が法的,政治的意味を欠いたまま使用される傾向があることを指摘した上で,「ワールドシチズンシップ」概念について,法的,政治的意味も含めて検討している。 |
Heater(1999)は,「ワールドシチズンシップ」の意味を‘あいまい'から‘明確'な意味へと広がる ‘Iden-tity’,‘Morality’,‘Law’,‘Politics’の四つのカテゴリーを使って説明している(Table1参照)。‘Identity’は,他の動物にはない言語能力や普遍的な自然法を理解する人類種に属するゆえに,自らを「ワールドシチズン」と考える人々を含みこむカテゴリーである。個人の行動が,他者に影響を及ぼすことを自覚し,地球とその未来も含めた全居住者に対し,自分の行為に責任を負う人々は,‘Morality’に分類される。このカテゴリーに属する「ワールドシチズン」は,自国の利益よりも国際社会の利益を重視する人々でもある。自然法,及びそこから派生する人権を尊重し,「世界人権宣言」のような国際的権利や国際法を遵守する人々は,‘Law'に分類される。彼らは,究極的には,全世界共通の法律や裁判制度・組織の設立をめざすことになる。最後に,地球レベルの政治的意思決定に影響を与えようとする人々,或は,コスモポリタンな民主主義の参加者であろうとする人々は,‘Politics’に分類される。Heaterは,地球レベルで政治的権利を行使するには,三つの方法があるとしている。一つは,Oxfam,Amnesty InternationalやGreenpeaceなどの市民社会の諸団体に,最も簡単な形では, |
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