寄付や署名を通して参加する方法である。二つ目の方法は,すでに存在する国連のような超国家的組織の活動にかかわることである。国連憲章を守るよう,自国の政府に働きかけるのも政治的な「ワールドシチズン」の行為とみなされるであろう。最後は,民主的国際政治制度・組織としての世界政府の樹立を支持し,設立へむけて努力することである。 第2節(「シチズンシップ」概念について)において,「シチズンシップ」概念が三つの構成要素から成り立つことを指摘したように,「ワールドシチズンシップ」概念もまた,三つの構成要素に分けることができるようである。第一に,‘Identity':世界共同体への所属意識,第二に,‘Moral global citizenship':世界共同体への責任,第三に,‘Political global citizenship':法的,及び,政治的権利の保障と行使である。 5. 「グローバル教育」における「グローバル シチズンシップ」概念 5-1 1990年代以前:‘Moral global citizenship' 1980年代に,グローバル教育の専門家達は,若者が「グローバルシチズン」として生きるためは,グローバルな視野が必要であるとし,具体的に必要とされるいくつかの視野を提案した。第5節の1では,Hanvey,及びPikeとSelbyがそれぞれ提示したグローバルな視野を検討し,これらの視野が,先に述べた「グローバルシチズン」概念の構成要素の中では,‘Moral global citizenship' を育むことに貢献したことを指摘したい。 Hanvey(1982)は,五つの習得されるべきグローバルな視野を提案している。第一は,‘Perspective consciousness’であり,これは一人一人,自分の世界観が普遍的なものでは |
ないことを認識し,多様な視点を受け入れることを意味する。第二は‘State of the planet awareness'であり,私たちは,人口増加,移民,経済状況,資源,環境,国際的または国内的な紛争等の世界の現状について気づくべきであることを意味する。第三の‘Cross-cultural awareness'は,文化の多様性に私たちは気づくべきであることを意味する。第四の‘Knowledge of global dynamics'は,全ての要素が相互に影響し合う一つのシステムとして世界をとらえる視点である。第五の‘Awareness of human choices'は,一人一人の決断が,世界中の他の人々に影響を与えるのだとういう視点を持つべきことを示している。 これら5つの視点の内,‘Perspective consciousness'や‘Cross-cultural awareness'の視点を身につけ,多様な考え方や文化を尊重する態度を養うことは,責任ある「グローバルシチズン」であるための前提条件として大切であろう。また,‘Knowledge of global dynamics'や‘Awareness of human choices'の視点は,他者との相互依存性についての理解を深め,人々を他者への責任を果す「グローバルシチズン」へと導くであろう。 Hanveyの影響を受けた,PikeとSelby(1988)も,相互依存性と多様性を理解することが重要であると強調している。彼らは,相互に影響しあう四つの次元からなる,彼ら独自のグローバリティに関する見方とグローバル教育の五つの目標を提示している。彼らは,四つのグローバルな次元を‘Spatial' 、‘Temporal' ,‘Issues' ,‘Human potential' と呼んでいる。そして,五つの目標は,‘Systems consciousness' ,‘Perspective consciousness' ,‘Health of planet awareness' ,‘Involvement consciousness and Preparedness' ,‘Process mindedness'から構成されている。 |
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