今日,私たちにとって,国外で生産されたものを消費することなく生きることは不可能である。さらに,世界のどこかで起きた出来事が,世界の他の地域に影響を及ぼすこともよく知られている。このように,私たちが,世界の他の人々と関係を持たずに生活することは非常に困難なことから,PikeとSelby(1988)は,グローバリティは空間的(Spatial)な相互依存性をおびていると指摘している。そして,彼らは,例えば,環境破壊がその起源を過去に持ち,また未来の世代にも影響を与えることから,相互依存性が空間的のみならず,時間的(Temporal)であることも指摘している。次に,問題(Issues)の次元は,環境汚染,人種差別,核の脅威などのグローバルな諸問題を意味する。グローバルな諸問題は,世界の各所に,現在,未来を問わず影響を与え,諸問題自体も互いに影響しあうので,空間的,時間的次元に結びつく特徴がある。空間,時間,問題の三つの次元は,自己の外部の世界を知ること,即ち,外への旅(our outer world)であるのに対して,人間の可能性(Human potential)の次元は,内面への旅(our inner reality)を意味する。PikeとSelby(1988)は,外部の世界の真実を知り,理解を深めることで,人々は内面的に変化し,新たな視点を獲得すると考え,次のように述べている。 |
していることを,理解させようとするものである。そして,生徒に,彼ら自身も,網の目上の一点として存在し,諸現象や出来事につながっていることを認識させることを目標としている。第二の‘Perspective consciousness’は,生徒に,彼らの世界観は普遍的なものではなく,世界には多様な視点が存在することを認識させようとするものである。第三の‘Health of planet awareness’は,生徒に,冨の分配,人口増加,発展のタイプ,人間の活動の環境への影響,国際関係の緊張,人権などの地球の現状,発展と傾向に気づかせ,理解させることを目標としている。また,これらの地球的諸問題を,過去及び未来の視点から,そして,正義や人権に関する十分な理解に基づいて考察することを,生徒に期待している。第四の‘Involvement consciousness and Preparedness’は,生徒が,各自の行為が他者や地球に影響を及ぼすこと,地球的諸問題の解決は,各自がどのような行動をとるかにかかっていることに気づかせることを目標としている。そして,将来,民主主義政治の参加者として正しい行動をとるために必要なスキル(批判的に考える力,平和的に交渉する力など)を身につけさせることを目標としている。最後の‘Process mindedness’は,学習と個人の知的,精神的発達には,限りがないこと,新たに獲得した視点でさえ,将来は変化を強いられることもあることを,生徒に気づかせることを目標としている。 以上のように,PikeとSelbyは,世界全体を複雑な多層構造の網のようなシステムとしてとらえ,その網の目上で起こる諸現象,さらには,網の目上の一点に存在する諸個人は,相互に影響し合うと考えている。 |
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