こうした世界観に立つ彼らは,グローバル教育の目標を,生徒に網の目の一点に存在することを認識させ,生徒達の行動は常に,世界の人々,諸現象,出来事に影響を与えることに気づかせることだと考えているようである。世界中の人々,諸現象,出来事との間につながりを見いだす人は,他者及び,地球に対して責任ある行動をとるにちがいない。そして,網の目の一点として,自分の存在を認識する人は,地球的諸問題を自分の問題として考え,それらの問題を改善するため行動しようとするであろう。1990年代以前のグローバル教育は,諸個人,諸現象,出来事の相互依存性の理解に焦点を当て,他者,地球に対する責任を果す市民,即ち,Heaterの提示したワールドシチズンシップのうち,第二のカテゴリー‘Morality’に相当する市民性を育成することに,貢献したと言えよう。 |
政治機関があまり効果的でないことを次のように指摘している。 「グローバル資本主義,労働のグローバルな分業,核兵器のグローバルな増殖,グローバルな環境問題や国境を越えて広がる危険な病気,グローバル化する観光,大量移民そしてグローバルなメディアやコミュニケーションネットワークは,今日,国家の政治的機関としての効力に挑戦するものである。」 こうした政治的機関としての国家の力が低下する中で,専門家達は,市民がグローバルレベルの政治的決定に参加し,グローバルデモクラシーを実現するためのいくつかの方法を提案している。例えばDower(2002b)は,世界政府,或は,世界連邦国家を設立すべきであると主張する人々がいることを指摘している。他には,国際連合を改革する方法が提示されている。 Axtmann (2002) はこの方法を提案しているHeldの考え方を次のように紹介している。 「国際連合に関して,Heldは,世界中の市民によって民主的に直接選ばれた人々による新たな総会を創設することを提案している。そして,Heldは,選出された代表者の役割は,諸国家,非政府組織,市民グループや市民運動家などで取り決めた,国際的に合法的な協定に基づいたものでなければならないと述べている。」 最後に,各国の政党,非政府組織や世界に広がる様々な市民のネットワークなどの現存する組織を通して,グローバルシチズンとしての権利と責任を行使することも可能である(Dower2002b)。このような形でのコスモポリタンデモクラシーの実現については,Anker(2002)も、WTOなどのグローバルな組織や多国籍企業の意思決定に影響を及ぼすため活動するグループが,その規模,数ともに拡大しつつあると指摘している。 |
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