ing の方が適している」という示唆を与えている。task-supported teaching とは,先生が予め導入しておいた言語アイテムを使いながらコミュニケーションの練習を可能にする方法である。Carlessは英語教育が初等教育レベルにまで広がってきているアジア地域にTBLT指導法を導入する場合には,学習者の年齢,それまでの英語学習のレベル,教室文化の相違,教員の研修や信念などによって教育実践がどのように今までとは違った捉えられ方をするか詳細に調査する必要があると指摘する。

(3) 教員養成および教員研修における導入
 新しい指導法が開発されれば,それを熟知した教師が必要とされるのは当然のことであり,日本の中等教育現場においてTBLT指導法を採用する場合には,それに精通した教師の養成が必要であることは言うまでもない。 しかし,TBLT指導法は従来の指導法に比べても,それほど負担のかかる指導法ではない。大学の教員養成課程にTBLT指導法の講義が試験的に導入された際の報告を読むと,TBLT指導法を大学の教員養成授業に組み込む意義と効果が理解できる。
 Willis(1996)によれば,1992年にトルコの大学で実験的に教員養成課程にTBLT指導法が導入された。実習生は1.学習するべき文や形態素の提示(Presentation),2.反復練習(Practice),3.例文作り(Production)という教師主導のPPP指導法を経験した後にTBLT指導法について学習し,PPP指導法とTBLT指導法の類似・相違点についてのコメントを求められた。それをまとめると,(1)TBLT指導法はPPP指導法の順序を逆にしたような指導法であり,(2)大抵の指導テクニックは類似しており,(3)意味と形態素,正確さと流暢さ
に意識を向かせる点も類似している。一方,(1)相互に関係のない語のかたまり(chunk)から文全体を構築するよりも全体を学習してから細部へと進む,(2)現実のコミュニケーションが必要である,(3)流暢さ重視の個人的会話(private communicati-on) と正確さ重視の公的会話(public communic-ation)の区別がされている点がTBLT指導法はPPP指導法とは違う,という指摘があった。また,(1)タスクが面白い,(2) このアプローチを使うといろいろな活動ができる,(3)生徒の考えていることがわかる, (4)学習者が知っていることとできることを有効に活用できる,といったタスクの効用についての感想も述べられた。このようにTBLT指導法は教育実習生レベルでも比較的容易に受け入れられる指導法であり,TBLT指導法を紹介することで従来のPPP指導法とTBLT指導法の特徴をはっきりと認識させる効果も期待できる。Cameron(1997)の報告 によると,TBLT指導法は現職教員の研修プログラムにも採用され,指導力向上に大きな効果を発揮している。
 
まとめ
 これまで検討してきたようにTBLT指導法は,コミュニカティブな英語教育の中でタスク達成を目標言語のみで行わせることが自然である環境で応用するのが特に効果的であり,目標言語のみを使用してタスクを遂行させるのは英語による発話を活発にし、習得した表現をさらに自然な英語環境で定着させるのに役立つものである。TBLT指導法は,わが国の中等教育に導入するに充分な研究成果もあり,Ur(1981), Lee(2000), Ellis(2003)などの実践的指導書の学習で比較的容易に導入が可能である。TBLT指導法を導入すれば,似しており,(3)意味と形態素,正確さと流暢さ
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