して採用されている。 研修中は若手研究家とインストラクターが寮型のホテルに滞在し,主要言語は英語のみとする英語環境を作り,月曜日から金曜日までは文化地理学,アカデミック・ライティング,ポップ・カルチャー,キャンパス・ライフ,アメリカの歴史など,アメリカでの実生活および研究生活をサポートする内容をTBLT指導法で学習することになっている。日本の高等教育機関でも,いままでは学部単位で抱えていた語学教師を大学附属のランゲージ・センターや外国語教育部門に配置して,学部の枠を超えた語学教育プログラムを運営する機関が増えてきている。そのような機関での英語教育プログラム作成にも,JFDP-English as a foreign Language Courseは参考になるであろう。 (2)初等教育における導入 Carless(2004)によれば香港政府は 'task ba-sed' または 'task-based learning' と考えられるアプローチを初等教育の英語教育シラバスに採用している(Curriculum Development Council, 1997, 2002, cited in Carless)。しかし,初等教育への応用には(1)母語(広東語)使用頻度の高さ、(2)授業管理,(3)基礎英語知識の欠如のために英語発話量が増加しない,という問題点が指摘されている。この問題点は香港だけでなく,同じような教室文化を共有している中国,日本,韓国,台湾にもあてはまると指摘する。CarlessはAlicc(教職歴8年),Connie(教職歴5年),Betty (教職歴2年)の3人が実施した51回におよぶTBLT指導法による授業を観察し,観察終了後にインタビューを行った。それによると,学習者が小学生の場合,母語多用に関しては,(1)英語の知識が少な |
い,(2)タスクの遂行を助けるためにはタスクの指示内容を母語で確認する必要がある, (3)感情を表現する場合には母語の方が容易である, (4)英語使用が面倒であるという懈怠による,など理由はさまざま考えられるが,Alice, Connie, Bettyは, 小学生の母語多用に対しては柔ら かく母語多用をたしなめたり,見て見ないふりをしたり,他のことに気を取られて気づかないことにしたりするという。日本でも小学校での英語授業が必修になるが,生徒の母語多用に教師がどのように対処するべきかは重要な検討課題である。 Carlessは授業管理に関して3人の心の葛藤についても調査した。TBLT指導法を用いてペア・ワークやグループ・ワークをさせると授業が全体的に騒がしくなる。特に1クラ スの在籍人数が多いアジアの英語教育教室では騒がしさが大きくなる。アジアの教室文化には授業が騒がしくなることを肯定的に捉える習慣がないので,可能な限り授業の静粛を保つこととコミュニカティブなタスクを課して発話量を増やすことを同時に達成しなければならない。このバランスの難しさに3人とも強くディレンマを感じていた。TBLT指導の観点からは効果的に授業を行っているにもかかわらず,アジアの教室文化の観点からは授業管理能力が低く授業を統制できていないと誤解されるからである。この論点は日本の小学校にTBLT導法を導入する際にも充分な議論を要する。 基礎英語知識の欠如のために英語発話量が増加しないことについてはCar-lessも3人の先生が感じるフラストレーションに理解を示 して,「年齢が6〜7歳の生徒であればさまざまなタスクを処理するほど英語の力が発達していないであろうからtask-based teaching よりも task-supported teach- |
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