高等学校におけるオーラル・コミュニケーション指導における言語的評価にはより詳細な評価項目が必要となる。American Council for the Teac-hing of Foreign Languages が提示しているACTFL Proficiency Guidelines (2005)はnovice, intermediate, advanced, superior, distinguished という ランク毎にlow, middle, high という詳細な規定があり,EFLの基準としては高い評価を得ている。例えば,最も使用頻度が高いと思われる中級言語レベル評価の主な評価観点については表7のようになる。

8.Task-Based Language Teaching指導法の
 将来性

  (1)高等教育における導入
 ESL環境のアメリカでは高等教育においてもTBLT指導法が採用された研修が行われている。Cozonac(2004)の報告によれば、アメリカ合衆国
 の公的機関であるAmerican Councils for Inter-national Educationは海外からの高等教育レベルの若手研究者に1年間の研究の機会を与えて、研究者の本国の研究教育水準を上げるプログラムJunior Faculty Department program(JFDP)を運営している。その教育活動の効果を上げるために,JFDPに参加する若手研究家のうちでTOEFLスコアが下位の者30名を対象に1ヶ月間の英語集中イマージョン教育を行っており,そのプ ログラムにはTask-based Language Teaching 指導法が採用されている。その研修プログラ ムはJFDP-Engl-ish as a Foreign Language Courseと呼ばれ,旧ソビエト連邦の人気観光スポットであったモルドバ(Moldova)にあるAmerica Language Centerで1996年より実施されている。そこでは(1)外国語教授法, 言語学,教育学の修士号取得者で,(2)外国人への英語教授経験を有し,(3)TBLT指導法を理解しているインストラクターが指導者と
 

表7 ACTFL Guidelines: Speaking - Intermediate


(総論) 中級レベルとは, 主として受け答えという受動的な言語使用ではあるが,学習した文法事項をつなぎ合わせてことばを作り出せるレベルである。また,簡単な方法に制限されるが,基本的なコミュニケーションのためのタスクを開始,継続,終了させ,質疑応答が英語で可能なレベルである。
Intermediate-Low
・母語からの強い干渉を受けているし,誤解も頻繁であるが,もっとも基本的な要求をする程度の語彙は身についており,善意をもって話
 を聞いてくれる相手に対しては発話を繰り返すことで概ね理解されるレベルである。
・言語的にはかなり制限的であり、不正確な点が目立つが,自ら簡単な意見の陳述をしたり,他人の意見陳述に応答したりすることができ,
 自己紹介,食事の注文,買い物,指示を仰ぐことができる。
Intermediate-Mid
・発話の内容を誤解され,発音は母語の影響を強く受け,やっと流暢さを保てるレベルであるが,善意をもって話を聞いてくれる相手に対
 しては発話を繰り返すことで概ね理解されるレベルである。適切な言語変化などに苦慮すると長い枕黙が生じるレベルである。
・自分の生い立ちや余暇の過ごし方といったトピックについての簡単な対話に参加ができ,自分自身や家族のことについて簡単な話がで
 きる。
Intermediate-High
・発話を繰り返すことはまだ必要であるが、多数の適切なコミュニケーション・ストラテジーを用いて幅広い出来事や話題の一般的な会話
 を開始,継統,終了することができ,このレベルの話者に慣れていない相手によっても発話が概ね理解されるレベルである。
・簡単な叙述や描写のための談話ができるようになり始めるが,語彙が限られているために会話へのためらいがあり,やや必要な回りくど
 い表現が見られる。

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