仕訳を行う。何か不具合が起こった時にのみ 仕訳をすればよいというものではない。簿記 教育は,取引事実に従って誠実に仕訳とい う作業を行い,企業行動の動きそのものを仕 訳をとおして把握することを教えることであ り,このような基本をふまえた上で,実務の 多様な会計処理に対応できる人材育成を 目指している。と答えた。 また,筆者自身は,大学教育においては 帳簿の決算処理方法は大陸式締切法が と考える。しかし,現在,大学で使われて いる簿適切である記の教科書のほとんどは 簡便法である英米式締切法を採用してお り,筆者も英米式締切法で教えている。な ぜなら,簿記検定試験や実務は英米式を 採用しているからである。たとえ理論的に 正しくとも,はじめて簿記を学習する学生 に検定試験等で不要な混乱を与えるとし たら本末転倒であると考える。このような, 教育と理論,教育と実務,さらには理論と 実務との乖離はなぜおこるのであろうか。 結論からいえば,それぞれがよって立つ 目的論の相違からくるのである。教育の目 的は人材の育成である。また,理論の目 的は真理の探究であり,実務の目的は効 率性の追求である。 9) 文部省『高等学校学習指導要領解説 商業 編』実教出版,平成12年3月,p16〜p19。 10)拙稿「ビジネス教育論の展開」商業教育論 集第13集,日本商業教育学会,平成15年3 月,p2〜p6。 11)学校教育法 第52条(大学),第41条(高等 学校),第82条の2(専修学校),第83条(各 種学校)。 |
12)中央教育審議会「中央教育審議会 第1次答 申」平成8年7月,第1部(3) 「教育において は,どんなに社会が変化しようとも,『時代を超 えて変わらない価値のあるもの』(不易)がある 中略 また教育は,同時に社会の変化に無関 心であってはならない。「時代の変化とともに 変えていく必要のあるもの」(流行)に柔軟に 対応していくこともまた,教育に課せられた 課題である。」 13)安藤英義『簿記会計の研究』中央経済社,平 成8年,p39。 14)片野一郎訳『リトルトン会計発達史 増補版』 同文舘,平成元年,p37。 15)文部省『高等学校学習指導要領解説 商業 編」実教出版,平成12年3月。 16)学校教育法第1条に掲げてある学校と第82条 の2専修学校,第83条各種学校。 17)学校教育法第52条。 18)大学審議会「21世紀の大学像と今後の改革 方策について(答申)―競争的環境の中の個 性が輝く大学―」平成10年10月,第1章3. (1)i)(イ)。 19)「中央教育審議会・第1次答申」平成8年7 月,第1節(3)。 20)大学審議会「21世紀の大学像と今後の改革 方策について(答申)―競争的環境の中の個 性が輝く大学―」平成10年10月,第1章3.( 1) i)。 21)拙稿「教科『商業』におけるビジネス倫理観の 育成」日本商業教育学会論集第16集,平成 18年3月,p34。 22)簿記会計教育として学生に生きた現実の企 業活動を実感させるものを例示すると次のよう なものが浮かび上がる。 |
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