る会計を企業会計という。ふつう会計という場合,この企業会計をさす4)。」,「企業会計とは,こうした企業の経営活動を記録・計算・整理し,報告する手続をいう 5)」であり,会計とは企業の行う経営活動について記録・計算・整理し,報告する手続をいうのであり,企業会計を教育内容としている。
 また,教育については,「教育についての定義には各種各様のものがあるが,これを一口にいえば,学ぶ立場の者に対しその人間形成を図って,教える立場の者が意識的に働きかけ,学ぶ者がこれに反応する精神の相互作用であるということができよう 6)」とあり,教育とは,教えるものと学ぶものとの相互作用によって行われる人間形成活動であるといえる。これらのことを前提に簿記教育,会計教育を文字通り定義すれば,簿記を教育内容とした人材の育成が簿記教育であり,会計を教育内容とした人材の育成が会計教育である,ということになる。
(2)簿記と会計
 ここでまず問題になるのは,簿記と会計との関係である。わが国では,簿記については日本簿記学会,会計については日本会計研究学会があり,それぞれ簿記教育,会計教育についての研究が進められている。大学教育における専門教育としての一般的なカリキュラム編成をみれば,最初に「簿記」「簿記論」を学びその後「会計学」の概要,会計学の各分野,各科目に繋がり,簿記は会計学を学ぶための基礎的・基本的な教育内容と捉えていることがうかがえる。この一連の流れを教育の視点からみれば,簿記と会計は1つの流れとして初学習者に教授することが適切であるとの合意が前提となり,カリキュラム編成がなされているといっても差し支えないであろう。
 簿記と会計の繋がりは,簿記は企業活動そのものを複式簿記を使って実態把握し,財務諸表に表し,会計はその財務諸表を監査し,その会計監査に基づいて外部へ報告を行い,その会計報告に対して会計責任が生ずるという一連の手続を行うことである 7)。つまり,簿記がなければ会計は成り立たないがゆえに,まず簿記の学習から入っていくのであり,簿記と会計はそれぞれ独立しているが,お互いに密接不可分であるという有機的結合関係にある。
 簿記には,学問としての簿記学があり,人材育成としての簿記教育があり,企業等で行われている簿記実務がある。同様に,会計には学問としての会計学があり,会計教育があり,会計実務がある。簿記にしろ,会計にしろ,それぞれ独立して理論,教育,実務分野を持ち研究が進められている。それぞれの分野は独立しているとはいえ相互に深い関連性がある。実務を考慮しない教育は意味がないし,理論の裏付けのない実務は迷走する。それかといって,実践科学としての立場を忘れた理論は実務から遊離する,という緊張関係を内包しつつ全体としての均衡を保っている。
(3)理論,教育,実務の乖離
 理論,教育,実務は同じ簿記,会計を扱っていても,それぞれが主体として独立した行動基準を持ち自己主張する。しかも,それぞれの自己主張は合理的で正当なものである 8)。さらに,教育,理論,実務の目的はそれぞれ多重構造を持っている,教育には,教育とは何かを探求する教育理論があり,教育方法については日々,工夫・改善・改良がなされており,それに基づいた教育実践がある。理論は純粋理論としての立場があり,真理の探究のためのアプローチに関する方法論があり,大学教育として理論に関する教育が行わ
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