教授研究する専門教育である 17)と共に学校教育(学校教育法第1条,いわゆる1条校)の締めくくりとして自ら主体的に学び,考え,柔軟かつ総合的に判断できる能力等の育成が重要であるという観点に立ち,幅広く深い教養,高い倫理観,実践的な語学能力・情報活用能力の育成とともに,専門教育の基礎・基本等を重視する人材の育成を託されているのである 18)
(2)企業会計
 大学教育で行う簿記会計に関する教育は,単式簿記で把握が可能な単なる収支計算ではなく,利潤追求を前提とした企業会計を前提に行われる。企業行動は,各種の会計帳簿(仕訳帳,総勘定元帳,補助簿等)に記録,計算,整理し勘定科目と金額を基礎として貸借対照表や損益計算書などの財務諸表として開示することが法的に求められている 13)。このような会計処理の流れをみるとき,簿記と会計を切り離すことは教育上適切とはいえない。
(3)基礎・基本と発展・応用
 簿記会計教育における基礎的・基本的な教育内容は絶対的なものではなく相対的なものである。それぞれの教育機関の設立目的によって,また,学習者の学力,興味,関心,進路希望等によって,教育内容,カリキュラム編成が異なり,それぞれの教育現場に適合した基礎的・基本的な教育内容,発展的・応用的な教育内容がある。
 また,すべての会計学関連科目にも基礎的・基本的な教育内容と発展的・応用的な教育内容がある。大学教育においては,会計学の基礎的科目としての「簿記」があり,基本的科目として「会計学原理」等の会計学全般を概説する科目があるのが一般的であろう。「簿記」においても基礎的・
基本的内容があり発展的・応用的な内容がある。さらに,会計学関連科目のなかでも,「財務諸表論」や「管理会計論」基礎的・基本的科目とすれば,「会計監査論」,「税務会計論」,「原価計算論」,「経営分析論」等が発展的・応用的科目といえる。さらに,それぞれの科目において基礎的・基本的な内容があり発展的・応用的な内容があるという多重構造になっている。会計学関連科目のうち,教育内容がより高度であるか,実際的・実践的であるかに関わらず,すべての科目に基礎的・基本的教育内容と発展的・応用的な教育内容がある。
(4)課題探求能力
 大学教育は,初等中等教育の基礎の上に成り立っている。初等中等教育で育成する「生きる力」とは,「これからの子供たちに必要となるのは,いかに社会が変化しようと,自分で課題を見つけ,自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,行動し,よりよく問題を解決する資質や能力であり,また,自らを律しつつ,他人とともに協調し,他人を思いやる心や感動する心など,豊かな人間性であると考えた。我々は,こうした資質や能力を,変化の激しいこれからの社会を『生きる力』と称する 19)」と定義づけている。大学教育は,この「生きる力」の基礎の上に,高等教育として「主体的に変化に対応し,自ら将来の課題を探求し,その課題に対して幅広い視野から柔軟かつ総合的な判断を下すことのできる力 20)」という「課題探求能力」の育成を重視することが求められる。
 このような大学教育の基本的な方向性のもとに簿記会計教育が育成しようとするものは,簿記会計に携わるものとしての倫理観を備え自主的に考え,自律的に判断し,決断したことには積極的に
 - 6 -
<<back    next>>