二つのテーマがある。ひとつは,簿記会計に関する理論の理解や知識・技術の習得という簿記会計教育の教育内容としてのテーマであり,もうひとつは,そのようにして身に付けた能力をいかにして実務に応用していくかというテーマである。簿記会計教育には実務に対して即戦力の要請もあるが,仕事内容についてのあまりの特殊化・専門化は大学教育としてなじまないと同時に事実上不可能である。実社会での仕事内容に正しく対処できる基礎的・基本的な能力を育成する必要がある。 5)一応の完成をみる簿記会計教育 大学教育は,大学院教育を別にすれば,学校教育(学校教育法第1条)の締めくくりとしての位置づけがなされてる。簿記会計教育は,大学在学中に社会に出て行く職業人として,一応の完成を目指すという前提のもとにその教育内容が構成されなければならない。 6)生涯教育・継続教育としての簿記会計教育 大学卒業後は,簿記会計に関する仕事に直接携わる者,間接的に簿記会計に関わる仕事に携わる者,仕事内容が簿記会計に関わりのない者,また,さらに進学する者等の多様な進路が考えられるが,経済活動に関わりを持つ限り,簿記会計とは無関係ではあり得ない。実社会に出ていく学生は,実務との関わりのなかで勉強の継続は不可欠である。進んだ専門教育に対応するためにも基礎的・基本的な教育内容の充実に努めなければならない。 (3)専門教育としての簿記会計教育 1)専門教育 通常,簿記会計教育といった場合は,専門教育を意味している,大学教育における簿記会計教育は,これを専門教育 24)として捉えるのか,そ |
の専門教育も高度な職業資格を目指すのか,実務での業務遂行能力に必要とされる基礎的・基本的なものとして捉えるのか,教養教育として捉えるのか、また,大学卒業後直ちに役立つことを目指すのか,あるいは将来的に役立つことを目指すのかの組み合わせによって異なってくる。簿記会計を専門教育として学ぶものは,前述の継続教育を念頭におき実務での業務執行能力や仕事上の理解力が求められる。専門教育は自らが事業を行うか,何らかの組織の一員として働くことを前提としており,会社の経理事務,一般事務,事務以外の営業等の経営活動に従事することが考えられる。また,簿記会計教育には,専門教育としての即戦力の要請もあるが,仕事容について過度の特殊化,専門化は大学教育になじまない。 2)カリキュラム編成 専門教育としての簿記会計教育は,会計,経営,商業,経済に関する学部・学科・コースに位置づけられている。 専門教育としての簿記会計教育内容は,学部・学科のカリキュラムよって異なり会計学の学問体系全体をカバーすることもあるし,当該学部・学科・コースの目的達成の為に重要な分野として組み込まれている場合もある。また,多くの場合,学生が自らの必要性に応じて選択履修されている。 学生が選択履修しても,簿記会計教育としてのサイクルを維持するためにカリキュラム編成は,基礎的・基本的内容から発展的・応用的内容に学習を深めていくことを可能にする科目構成となっている。専門教育としての導入部分については,教養教育としての簿記会計教育内容と同様なものであるが,職業教育としての専門性につながる基礎・基本と認識されていることが第1サイクルで一応の完結をみる教養教育とは異なるのである。 |
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